一時3万9156円…日経平均が最高値を更新しても「庶民」に乏しい高揚感 バブル期との違いは何なのか(2024年2月23日『東京新聞』)

 22日の東京株式市場で日経平均株価(225種)が、これまでの最高値だった3万8915円(1989年12月29日終値)を約34年ぶりに上回った。22日の終値は前日比836円52銭高の3万9098円68銭。同日午後には一時、3万9156円97銭を付け、取引時間中の最高値も更新した。
 日経平均株価が史上最高値を更新した要因は、円安を背景にした海外投資家の日本株買いだ。一方、金融資産として株式や投資信託保有する日本人の割合は小さい。実質賃金の減少が続く中で、生活が厳しく投資をする余裕がない人にとって、株高の恩恵は乏しい。

 

3万9098円68銭で約34年ぶりに史上最高値を更新した日経平均株価終値を示すモニター=東京都港区で
3万9098円68銭で約34年ぶりに史上最高値を更新した日経平均株価終値を示すモニター=東京都港区で

 

 「成長力や技術力、今後の期待を海外投資家から評価されている。デフレ脱却の信頼感を確認できて感慨深い。4万3000円までいくとみている」。野村ホールディングスの奥田健太郎社長は平均株価の最高値を受け、興奮気味に報道陣に話した。
 だが、この高揚感は金融業界や投資家らを除くと、広く行き渡っていない。銀座で働く男性(62)は「円安だから海外投資家がたくさん日本株を買えるだけ。日本の産業力とは関係ない。政府は貿易拡大につながる産業力アップと雇用・所得増大の連鎖をつくる政策を進めてほしい」と冷めた口調だ。


◆恩恵が集まるのは海外投資家

 日本取引所グループの投資部門別株式売買状況(東証プライム総売買代金)によると、海外投資家が年明けから7週連続で買い越し、取引の3分の2を占める。日本株上昇の恩恵は海外投資家に集まる。
 日銀の資金循環統計によると、日本人家計の金融資産に占める比率(2022年度)は53.8%の現預金が最も多く、株式や投資信託は16.1%にとどまる。新しい少額投資非課税制度(NISA)によって個人投資家は増えつつあるものの、株や投信の比率が約5割に上る米国に比べ、株高のメリットが家計に波及しにくい構図だ。


◆物価上昇が家計圧迫…「投資」の余裕がない人も

 株価を押し上げる要因の円安は、輸入物価の上昇によって家計を圧迫する。23年の消費者物価はバブル期の1989年に比べて2割以上増えた。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、昨年12月の実質賃金は22年4月以来、前年同月比で21カ月連続のマイナスだ。株式投資の余裕がない人も少なくない。
 SMBC日興証券の末沢豪謙氏は「バブルの頃は大半の人が持っている不動産も上がっていた。人口も増加局面で、みんなが今日より明日が良くなると思っていた」と振り返る。「現在は不動産も一部のマンションしか上がっていない」ことも、高揚感なき株高の理由だという。(白山泉)