――サッカー日本代表の伊東純也選手をめぐり、女性2人が酩酊状態で性行為を強いられたなどとして準強制性交容疑などで刑事告訴しています。伊東選手側は、「女性側の訴えは事実無根。週刊誌に報道させる目的や、多額の金銭を要求する目的で行われた行為だ」として虚偽告訴容疑で刑事告訴しました。
そんな中で19日には、伊東選手側が今度は告訴した女性2人に約2億円の損害賠償を求め民事提訴しました。元検事の西山弁護士に聞きたい、この2億円というのは妥当な額でしょうか。
【画像を見る】伊東選手に送ったというLINE「また飲みましょう!」などに対する両者の主張
(元検事 西山晴基弁護士)今回、伊東選手がスポンサーから契約を解除されるという結果になっているといい、さらに場合によって、スポンサー側から損害賠償請求を受けるケースになってくることまで考えると、金額としては妥当かなという印象です。
伊東選手側は週刊誌を訴えていない「そこがポイントです」
――スポンサーから伊東選手が訴えられる可能性もあるんですね。
(西山晴基弁護士)あります。今回のケースで例えば伊東選手が出ていたCMとかがあった場合に、それが使えなくなってしまった場合。使えなくなった分の損害賠償がスポンサー側から伊東選手に求められるおそれがありますので、そこについて女性らに対して賠償を求めるというのが考えられます。
――伊東選手側は女性2人を提訴しました、いっぽうで週刊誌を訴えていません。
(西山晴基弁護士)非常にそこが今回のポイントになっています。週刊誌が発信したときは、週刊誌に対して名誉毀損の裁判をするっていうのが多くあるんですけれど、今回対象が週刊誌ではなく、女性2人になっています。
(西山晴基弁護士)何がポイントかっていうと、損害賠償請求をするときに、名誉棄損になってしまうと、なかなか金額が上がりにくいところがあって、今回は虚偽告訴容疑をして、告訴した女性2人が、いわゆる伊東選手側にある意味加害行為をしたみたいな状況になっているので、女性2人に対してより損害賠償請求をしやすくなるというところがあって、この構成をとっていると考えられます。
「また飲みましょう!」LINEにも2通りの見方がある
――2人が伊東選手に送ったというLINE。Aさんは「私のラインしってる?ああよかった笑」という内容。Bさんは、「また飲みましょう!」と伊東選手側に送っているという。伊東選手側の今回の訴状には、「性被害を認識していれば挨拶を送ることは通常考えられず、極めて不自然だ」と主張しています。 (西山晴基弁護士)これも、伊東選手側の主張にも一理ありますし、他方で、女優やアイドル活動をしている方が、今後そういったスポーツ番組とかに出演するにあたって機会を失いたくないっていうところで話を合わせていたっていうところについても、彼女側の主張としてあり得るのかなというふうに思われます。 ――女性の弁護士側は、「こちらに違法行為は無いと考えています。訴状を見て対応を検討したい」としています。
中野教授「週刊誌を訴えたほうが、僕にはなんかスッキリする」
(神戸学院大学 中野雅至教授)週刊誌ではなく女性を訴えるっていうのは、今回いろいろ理由があってそうされたんでしょうけど、そういうことがあまり多くなっていくと、声を上げにくくなるのかな、って思う。事実はおそらく裁判で明らかになるんだろうけど、週刊誌に書かれた瞬間に著名人が全て社会的に抹殺されるというのであれば、最近の一連の中で何が問題かと言えば、週刊誌の報道が僕は問題だと思う。
性被害はやっぱりきちんと扱った方がいいと思うんですけど、こういう2億円の賠償請求とか言われたら、やっぱりなかなか被害の声は出しにくい、週刊誌を訴えたほうが、僕にはなんかスッキリする。
(西山晴基弁護士)
そうですね。回収という点では女性2人を訴えるより週刊誌を訴えた方が回収しやすいのは、あるかと思うんですけども、まだ真実がわからない状況の中での話になりますけれども、今回名誉毀損だけでなく、AさんBさんが警察に対して虚偽の告訴をしたところに着目して、民事裁判を起こされてるんですね。 普通に発信しただけではなく、捜査機関を使って伊東選手に刑事処罰を科す目的で、そういった告訴をしてまでここまでやったんだというところが強調されていますので、AさんBさんに対して金銭的賠償を求めるっていうふうな考え方は伊東選手側としてはあり得るのかなと思います。
(2024年2月19日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より) ◎西山晴基:弁護士 レイ法律事務所 元検事 性犯罪など多くの刑事事件の捜査・公判を担当 弁護士として刑事、芸能分野の案件を専門に扱う。