あの「女帝」が「ポスト岸田」を狙って動き出す…!尽きぬ野望、「ラストチャンス」は待望論なのか、脅威論なのか(2024年2月22日)

清新さのない候補たち

トランプに渡り合える「人間力

 雑誌を中心に小池氏の意欲を伝える記事が多くなり、メディアへの情報発信力が群を抜く高橋洋一嘉悦大教授は「ついにジョーカーが出てきた」と評した。ジョーカーとは安倍晋三元首相が小池氏の「奇抜な強さ」を表わした言葉だ。

 岸博幸慶応大学大学院教授は、『別冊! ニューソク通信』というネットメディアで、「小池百合子首相を提案したい」と踏み込んだ。政策を支持しているわけではない。

 前提としてあるのは今年11月の米大統領選でトランプ前大統領が共和党の候補となり、勝利を収める可能性が高いこと。既に、「もしトランプが大統領になったら……」という世界の政治経済に与える不安を予想する「もしトラ」は、間違いないものなったという意味で「ほぼトラ」と言われている。

 岸氏は「今の自民党総裁候補に、トランプに渡り合えるだけのプレゼン能力、コミュニケーション能力、人間力を持った政治家はいない。政界を見回してもひとりだけ。それが小池さんです」と断言した。

 確かに政局を読む力と勝負カンは一級品である。「人間力」には人を引き付けないではおかない肯定的な面と、したたかに生き抜く強さを半ば皮肉る否定的な面があり、双方持つという意味で小池氏の「人間力」は折り紙付きだ。

 「仮想敵」をつくり、マスメディアを味方につけて戦って大衆を引き付けるのが小池氏の戦法であり、だから群れずにひとりで東京都知事に上り詰めた。価格と利権と安全に物申して東京五輪豊洲移転を遅らせたが、終ってしまえば、ことごとく対立した自民党都連と親しくなり、2月1日に5年遅れで開業した豊洲の観光施設「千客万来」では、何事もなかったようにオープニングセレモニーに駆け付け、笑顔でテープカットに参加した。

これがラストチャンス

 本人もやる気満々である。2月2日には自民党本部で茂木幹事長、岸田首相と相次いで会談した。7日からは台湾を訪問して蔡英文総統のほか、1月の総統選で当選した頼清徳副総督らとも面会した。自民党訪問は「子育て政策についての意見交換」が理由で、訪台は「(台湾と)さまざまな分野での連携について共有できた」と語った。

 確かにそういう話もあったのだろうが、自民党とは4月28日に実施が決まった東京15区の補選での選挙協力が話し合われたハズだし、都知事としての初めての訪台には、外交もこなせる政治家として自分をアピールするという思惑もあったろう。

 ただ、小池氏には6月20日告示、7月7日投票という都知事選の“縛り”がある。国政に復帰して自民党と連携するにせよ、自民党に復党して総裁選を戦うにせよ、6月20日までに都知事を継続するか否かの決断を下す必要がある。

 北欧の一国に並ぶほどの予算と人員を抱え、名誉欲も権力欲も満たせる都知事の座を捨て、うまくいかなければ陣笠に終りかねない代議士になるのか、と国政復帰を疑問視する声はある。だが、小池氏に近い政治家、官僚、記者は、「小池さんには尽きぬ野望があり、今が女性初の首相となるラストチャンスと自覚している」と口を揃える。

 では、そのタイミングはいつなのか。もっとも早いのは、4月28日の補選に自ら立候補することだ。そう予測するメディアもあるのだが、元東京都官僚で「反小池」の言動を問題視されて都の外郭団体理事長をクビになり、現在は『都庁WatchTV』で都庁を監視する澤章氏はこう語る。

 「小池さんが出ればあっさり勝つでしょうが、単独で国会に乗り込んでもメリットはない。補選はあくまで前哨戦で、自分の推す候補を当選させて『小池強し』の流れを作って、次にもっと大きな波を起こすつもりでしょう」

 その次の波はいつか。 

それでも、出る

伊藤 博敏(ジャーナリスト)

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