専門家の見解は――。性加害疑惑で刑事告訴されているフランス1部スタッド・ランスの日本代表MF伊東純也(30)の代理人が19日、性加害はなかったとして相手側女性2人に、計約2億円の損害賠償を求める民事訴訟を大阪地裁に起こした。伊東側が民事提訴した意図や今後の見通しについて、レイ法律事務所の河西邦剛弁護士が解説した。
今回の問題は、昨年6月に伊東が大阪市内で同意を得ないまま性行為に及んだ疑いを「デイリー新潮」が1月31日に報道。女性側は準強制性交などの疑いで伊東を刑事告訴する一方で、伊東側は事実無根として今月1日に虚偽告訴の疑いで女性らを逆告訴した。
そして伊東側はこの日、女性2人に対して損害賠償を求めて民事提訴した。伊東側は社会的評価が著しく低下し、スポンサー契約が打ち切りとなったことなどで、約2億円の損害が出たと主張。請求額は、スポンサー企業からの報酬や放送見送りとなったCM制作費、伊東がマネジメント会社に支払う損害賠償額などの一部としている。
性加害の問題に詳しい河西弁護士は、刑事に続く民事での提訴について「伊東選手側としては、自分自身の主張と反論を裁判所に認定してもらうことによって、名誉の回復を図っていくことが一番の目的なのでは」とその意図を指摘した。
また、伊東側が一連の経緯を報じた新潮社を提訴しなかった点が議論を呼んでいるが「新潮社を訴えない理由としては、女性2人がうそをついて、警察に虚偽の告訴をして、さらにその事実をもって週刊誌に報道させたという伊東選手側の主張になっているので、そうすると構造的に女性側が新潮社側を巻き込ませたという認識があるんじゃないか」と分析する。
続けて「新潮社を訴えた場合は、真実相当性という取材を尽くしたかどうかも争点として増え、そうすると長期化する可能性がある。伊東選手側としては女性がうそをついている、真実ではないということのみを争点としているので、まずは女性のみを訴えている」との見解を示した。
また「伊東選手としては主に名誉回復を目指していると思う。示談交渉を有利に運ぶために、女性側のみを訴えたんだという見方はしていない」と〝示談狙い〟の指摘には否定的だ。
今後は女性側が民事で逆告訴する可能性も「十分にありえる」という。「当初はお金を求めずに刑事処分だけを求めるというのはあると思う。ただ、こうなってしまった以上は、防戦一方よりは、きちんとした自分たちの主張を損害賠償によって請求していくことは当然ありえる」と予測した。
それでは〝決着〟はいつになるのか。「刑事処分が出るまで、半年くらいでは。伊東選手が起訴で女性が不起訴、女性が起訴で伊東選手が不起訴、両方とも不起訴の3パターンがある。民事の判決が出るまでは、1年半から2年くらいだと思う」。しばらくは騒動が続きそうだ。