松本人志問題で「なぜ何年も経ってからなぜ告発したのか」と責める人に精神科医が言いたいこと(2024年2月21日)

松本氏の問題はテレビ業界や芸能界の腐敗の一端に過ぎない

日本の芸能界に広まらない危機感

テレビ業界に焦点を当てるべき

 アメリカでは映画業界から告発の狼煙があがりましたが、日本ではテレビ業界の腐敗に特に目を向けるべきでしょう。ハリウッドがあり、映画の国である米国と違い、日本ではテレビの影響力が格段に大きい。テレビ番組にレギュラーで出演できることのメリットは相当大きいからです。

 番組プロデューサーらから「俺と関係を結べば番組に出してやるよ」と言われたケースはよく耳にします。いわゆる枕営業の要求です。これは優越的な立場を使った明らかなセクハラ行為だし、女性を「ポイ捨て」するように扱うことは性的搾取、性的虐待に他ならない。

 日本ではテレビ離れが進み、視聴者の多くが高齢者になっているのに、高齢者向けの番組はほとんど作られない。

『80歳の壁』は60万部以上売れましたが、高齢者向けの情報番組などを作りたいから協力してほしいと言われたことは一度もありません。若者向け番組が多いのは、性接待が期待できるからではないかと疑ってしまいたくなります。

 これまでテレビ業界で一体、どんなことが行われてきたのか。過去の問題も含め、光を当てるべきです。

時間が経ってから暴露されるのは当たり前のこと

 今回、「何年も経ってからなぜ告発したのか」と告発者を責める声があります。テレビでもそのような意見が報じられますが、精神科医の私は怒り狂っています。性被害者は10年も20年も苦しみ続ける。時間が経過してからようやく言葉にできる、告白できるケースがある。これは至極、当たり前のことなんですよ。

 社会的立場を利用して性的な要求をすれば、たとえ後年でも「暴露」されうる。仕事をクビになったり、立場を失ったりする。それが世界的なスタンダードになりつつある。「厳しい世の中だ」と言う人もいますが、傷付く人がいる以上、そういう方向に社会は進むべきでしょう。

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 2月21日(水)12時配信の「 週刊文春 電子版 」および22日(木)発売の「週刊文春」では、「松本人志5.5億円訴訟」について特集する。

 A4用紙13枚におよぶ訴状の内容を詳しく紹介し、「週刊文春」を訴えた経験もある弘中惇一郎弁護士や、伊藤詩織さんの代理人・佃克彦弁護士が訴状のポイントを解説する。またA子さん、B子さんが訴状を読んだ感想、3年半前からスタートした「週刊文春」の取材経緯、編集部の主張も掲載している。

 さらに、 「週刊文春 電子版」 では橋下徹氏、箕輪厚介氏、江川紹子氏ら計8人の論者による 「松本問題『私はこう考える』」 を配信している。

 なぜ「傷つけていたならゴメン」と言えなかったのか…それでも鈴木涼美氏が「松本人志さん追放には賛成できない」理由とは  へ続く

週刊文春」編集部/週刊文春 2024年2月15日号