ソフト老害(2024年2月20日『中国新聞』-「天風録」

 年齢や肩書を盾に、周囲の意見を聞かない人は「老害」と呼ばれる。ずいぶんな表現だが、苦い経験をさせられた人も多いのだろう。それでも40代が「ソフト老害」という指摘にはさすがに驚いた

放送作家鈴木おさむさんが近著「仕事の辞め方」に自戒を込めて書いている。会社上層部にうまく取り入り、部下には理解も示す。だが「出世狙いのたいこ持ち」と見透かされ、才能をつぶされているという部下の不満にも気付かないのだそうだ

▲40代は就職氷河期に直面し、懸命に働いてきた世代である。有休消化も定時退社も当たり前の世代に突き上げを食うのは、バブル世代の端くれから見ても、何だか気の毒になってくる

▲低賃金や長時間労働への不満が、世代間対立にすり替えられているという見方もある。「老害」への批判も度が過ぎれば反発を招き、そのうち「若害」批判の逆襲が始まるかもしれない

▲鈴木さんはこうも言う。「きちんとものを言う存在は必要。嫌われるならはっきり嫌われよう」と。若者も意思疎通の大切さは分かっている。すぐに年を取ることも。先輩として昔話、自慢話、説教を避け、ソフトな物腰で覚悟と知恵が示せれば格好いい。