自治体に対する国の指示権を拡大する地方自治法改正案が7日、衆院本会議で審議入りした。改正案には、新型コロナウイルス禍などを受け、緊急時に国民の生命の保護に必要な対策を国が地方自治体に指示できるようにするとの内容が盛り込まれた。国と自治体の関係は「対等」とする地方自治を後退させる恐れがあるとして、野党から批判が相次いだ。(三輪喜人、我那覇圭)
◆政府が「重大事態」と判断すれば指示できる
現行法では、災害対策基本法など個別の法律に規定がある場合にのみ、国は自治体に指示ができる。改正案は、大規模災害や感染症のまん延など「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と政府が判断すれば、個別法に規定がなくても自治体に指示できると定める。
7日の本会議で立憲民主党の大築紅葉氏は、国の指示権拡大が「地方分権の流れを逆回転させる」と主張。国と自治体の対等な関係を「上下、主従に戻すことにつながる」と訴えた。松本剛明総務相は指示権拡大は国民の安全に重大な影響が及ぶ場合に限るとして「地方分権の後退との指摘は当たらない」と反論した。
◆国会関与があると「機動性に欠ける」
共産党の宮本岳志氏は、戦前の反省から憲法に地方自治が明記されていると指摘。改正案では「重大な事態」の範囲が極めて曖昧だと訴えた。また、沖縄県名護市辺野古(へのこ)の米軍新基地建設に向けて、政府が強制的な手法で工事を進めているとして「住民自治も団体自治も踏みにじっている」と批判。松本氏は、あくまで地方自治法に基づく措置だと主張した。
地方自治法 地方公共団体の組織や運営に関する事項を法律で定めるとする憲法92条に基づいた、地方自治で最も重要な法律。国と地方の役割分担や住民の権利・義務、条例、議会などについて規定する。2000年施行の地方分権一括法により、国と地方の関係は「対等」と位置付けられた。国会で審議中の改正案は「対等」の原則は維持するが、特例として非常事態の際、国の指示権拡大を定める。
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