コンプライアンスを乗り越えろ(2024年2月20日『山陰中央新報』-「明窓」)


1次情報の重要性を指摘した、2023年12月5日掲載の稲田豊史さんのコラム「コスパの果てに」

 テレビドラマを真剣に観(み)るのはいつぶりだろうか。『不適切にもほどがある!』にはまっている。1986(昭和61)年から令和の現代にタイムスリップした体育教師のダメおやじが、コンプライアンス(法令順守)無視の発言を連発。喫煙シーンもあり、毎回テロップでお断りが流れる

▼画一的な残業規制で現場のやる気をそぎがちな働き方改革に「気持ち悪りぃ」と違和感を口にし、令和の社会に疑問を投げかける。38年前、当方は中学生。当時を懐かしみつつ、主人公に共感している

▼昭和が全て良かったとは言わないが、令和は窮屈さを感じる。交流サイト(SNS)などで便利になる一方、人と人との関係が希薄になり、法令順守という正論に疲れてしまう。主人公は「こんな時代にするために俺たち頑張って働いているわけじゃねえよ」とも訴えた

▼現代では、時間短縮のため映像作品を「早送り」で観る若者が増え、1次情報も軽視されがち、と編集者の稲田豊史さんが本紙コラム『コスパの果てに』で指摘していた。記者なら取材相手から話を聞く、自らの目で場面を見ることが第一。情報があふれる令和だからこそ重みが増す。相手もあり、働き方改革に逆行するかもしれない

▼ドラマのテーマは「話し合いましょう」。時代や当たり前が変わることを理解し、若い人と向き合いたい。ちなみに配信サービスで観るドラマは倍速視聴はしていない。(添)