NHKに録音データの開示命じる かんぽ報道巡り 東京地裁判決(2024年2月20日『毎日新聞』)

 かんぽ生命保険の不正販売を報じた番組を巡り、NHK経営委員会が2018年、当時の上田良一会長を厳重注意していた問題で、市民グループ(原告114人)がNHK森下俊三経営委員長を相手取って経営委の議事録や議事内容の録音データの開示を求めた訴訟の判決で、東京地裁(大竹敬人裁判長)は20日NHK側に録音データの開示と原告1人当たり2万円の損害賠償を命じた。

 NHK側は「録音データは廃棄した」と主張していたが、判決は「NHKの役職員は現時点でも録音データを保有している」と認めた。

 原告側は「経営委による番組介入があった。再発防止が必要」とし、議事内容が記録された録音データの開示を求めていた。【巽賢司】

 

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NHKに経営委員会の録音データの開示命じる判決 東京地裁(2024年2月20日『NHKニュース』)

かんぽ生命の保険の不適切な販売問題を取り上げた番組に関連して、NHKの経営委員会が当時の会長を厳重注意した際の議事録などの開示をめぐる裁判で、東京地方裁判所は、NHKに録音データの開示を命じるとともに、NHKと経営委員会の委員長に賠償を命じる判決を言い渡しました。

かんぽ生命の保険の不適切な販売問題を取り上げたNHKの番組に関連して、日本郵政グループは2018年、番組担当者の編集権に関する説明に誤りがあったなどとしてNHKの経営委員会に申し入れを行い、その後、経営委員会は、ガバナンス体制の徹底を求めて当時の上田会長を厳重注意しました。

これについて、大学の名誉教授など110人余りは、詳しい経緯が明らかにされるべきだとして、NHKに当時の経営委員会の議事の内容と録音データなどの全面的な開示を求めるとともに、NHKと経営委員会の森下俊三 委員長に対し賠償を求めました。

20日の判決で東京地方裁判所の大竹敬人 裁判長は「議事録は、すでに開示されているもののほかには存在しないが、録音データが当時あったことに争いはない。これが削除されたことが立証されないかぎり、現時点でも録音データを保有していると認められる」と指摘し、NHKに録音データを開示するよう命じました。

そのうえで「録音データは情報公開の対象に当たり、開示する義務を怠った」などとして、NHKと森下委員長に対して原告1人当たり2万円を支払うよう命じました。

原告側は会見を開き、澤藤大河 弁護士は「画期的な判決だ。NHKと経営委員会が放送の不偏不党と真実、自律の保障などに努力することを求める」と話していました。

森下委員長は「すでに存在しない録音データを交付せよという判決内容であり、遺憾です。直ちに控訴の手続きをとります」とコメントしています。

NHKは「主張が認められず遺憾です。直ちに控訴の手続きをとります」というコメントを出しました。

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NHKに録音開示命じる 経営委の会長厳重注意で―かんぽ報道巡り・東京地裁(2024年2月20日『時事通信』)

 
NHK経営委員会の録音データ開示を命じる判決後、記者会見する原告と代理人弁護士ら=20日午後、東京都千代田区

NHK経営委員会の録音データ開示を命じる判決後、記者会見する原告と代理人弁護士ら=20日午後、東京都千代田区

 NHK経営委員会がかんぽ生命保険の不正販売問題を報じた2018年4月の番組について会長を厳重注意したことを巡り、元職員らが同局と森下俊三委員長に対し、厳重注意に関する議事録の開示などを求めた訴訟の判決が20日、東京地裁であった。大竹敬人裁判長は会議の録音データは存在すると認定し、開示などを命じた。

 

NHKの森下経営委員長が退任 今月末に任期満了

 経営委は、番組放送後に日本郵政グループから抗議を受け、同10月、上田良一会長(当時)を厳重注意した。この処分について、経営委による番組への介入だとの批判が上がっていた。

 大竹裁判長は会議の録音データについて、削除されたとは立証されておらず、「NHK役職員が現時点でも保有していると認められる」と指摘。森下氏もデータの存在を認識していたとし、開示措置を取らなかったのは「不法行為に該当する」と結論付けた。

 その上で、録音データの開示とともに、開示を怠ったことへの慰謝料として同局と森下氏に計228万円の支払いも命じた。

 原告の長井暁さんは記者会見し、「本来は外部からの防波堤となるべき経営委が一緒になって圧力をかけていた」と話し、判決が公共放送の自立を担保するきっかけになってほしいと訴えた。

 森下氏は「既に存在しない録音データを交付せよという判決で遺憾。直ちに控訴手続きを取る」とコメント。NHKも「主張が認められず遺憾」とした。

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NHK経営委、かんぽ報道で新たな資料(2024年2月20日『産経新聞』)


  かんぽ生命保険の不正販売を報じた番組をめぐり、日本郵政グループから抗議を受けたNHK経営委員会が平成30年10月、当時の上田良一NHK会長を厳重注意した問題で、経営委は24日、新たな資料を公表した。日本郵政グループが経営委にNHKのガバナンス(組織統治)強化を求める文書を送付し、会長注意に至った経緯を説明する内容で、10月の経営委で番組内容についても意見交換を行ったが、会長に対する注意が番組制作に影響した可能性を否定した。

 NHKは30年4月、「クローズアップ現代+」で不正販売問題を報道した。番組が放送後の7月、続編準備のため情報提供を呼び掛ける動画を番組ホームページなどに投稿したところ、日本郵政側が上田氏宛てに動画の削除などを申し入れる文書を送付した。

 郵政側とのやり取りで、番組の統括チーフ・プロデューサーが「番組制作について会長は関与しない」と説明。郵政側はガバナンス体制の検証と必要な措置を講じるよう求めて、経営委に文書を送付した。経営委は同年10月23日に議論を行い、上田氏への厳重注意を決めた。

 経営委が24日に公表した文書では、厳重注意を決定した10月23日の議論の内容についても紹介。番組がインターネットで情報提供を募ったことについて、委員から「インターネットの情報は偏っているので、作り方に問題があるのではないか」との発言もあったが、経営委は「経緯や状況について確認するために意見交換した」と説明した。

 そのうえで、上田氏への注意が「番組の取材や制作に影響したとは考えられない」との見解を示した。一方で、「(問題の)経緯を確認する中で、過去の番組に関する意見や感想も出たが、そのことで経営委員が番組編集に介入したのではないかという疑念をもたれてしまったことについては深く反省している」と総括。今後は疑いをもたれないよう、慎重を期すとしている。


 この問題では、番組ホームページに昨年10月、「かんぽ生命の保険をめぐる番組制作について」という文書が掲載され、経緯を紹介。番組側が「経営委が会長に行った厳重注意が、放送の自主・自律や番組編集の自由に影響を与えた事実はない」としている。