高齢者への虐待 1万8000件余と過去最多 9割以上が家族や親族(2024年12月28日『NHKニュース』)

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高齢者が家族や介護職員などから虐待を受けた件数は昨年度(令和5年度)、1万8000件あまりで過去最多となり、このうちの90%あまりは家族や親族からによるものだったことが厚生労働省のまとめでわかりました。
厚生労働省によりますと、昨年度、高齢者が家族や介護施設の職員などから虐待を受けた件数はあわせて1万8223件で、前の年度より698件増え、統計を取り始めた平成18年度以降で最も多くなりました。
このうち家族や親族などによる虐待件数は1万7100件で93.8%を占め、27人が死亡しました。
家族や親族による虐待を詳しく見ると、「種別」は
▽身体的虐待が最も多く65.1%
▽次いで心理的虐待が38.3%
▽ネグレクトが19.4%などとなっています。
また「虐待者の続柄」は
▽息子が38.7%と最も多く、次いで
▽夫が22.8%
▽娘が18.9%
▽妻が7.6%などとなっています。
さらに「虐待の発生要因」は、複数回答で
▽虐待を受けた人の認知症の症状が56.4%
▽介護疲れや介護ストレスが54.8%
▽虐待した人の理解力不足が47.7%などとなりました。
虐待の程度が深刻になるほど介護保険サービスを利用していない傾向があり、厚生労働省は適切なサービスや支援の利用を促すほか、自治体に対して虐待防止の体制作りを働きかけるなどして対策を進めるとしています。
介護する人を支える取り組み 相談にのる喫茶店
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家庭で介護する人を支えるための取り組みが地域で進められています。
愛知県春日井市NPOが運営する「家族介護者支援センターてとりんハウス」は、喫茶店として営業する店舗で、火曜日から土曜日の朝7時半から午後4時まで営業時間中はいつでも、訪れた人の介護の相談に応じています。
介護の経験や専門の知識があるスタッフが、悩みを聞いたりアドバイスをしたりするほか、必要に応じて行政と連携して支援につなげています。
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昨年度は533人の相談を行ったということです。
認知症の82歳の妻を自宅で介護している84歳の男性は「妻の介護をする中でいろいろ悩むことがあり、気持ちがうつのようになったこともあった。医師からこの場所を紹介してもらって週に4、5回来て、介護のいろいろな悩みを相談したり同じ境遇の人たちと話したりすることで自分自身の介護への理解が深まって、気持ちも和らいだ」と話していました。
運営するNPO法人「てとりん」 岩月万季代 代表理事
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「介護する人は自分の家族だからこそ『なんとかしなければ』とみずからを追い詰めてしまい孤独感を感じていることが多く、悩みを話せる場所があると悩みを抱えているのは自分だけではないことがわかり、救われるところがある」
この施設では介護者の支援事業として春日井市から月5万円の補助を受けていますが人件費や食材費などで毎年度、赤字が続いているということで、岩月さんは「介護者の居場所となる施設がもっと広がってほしいが、現実的にはマンパワーや金銭的な課題もあり維持が難しく、まだ少ないのが現状だ。介護者支援の重要性をもっと知ってもらいたい」と話していました。
専門家「個人の問題でなく 社会の状況で起きている」
家族介護の問題に詳しい日本福祉大学の湯原悦子教授は高齢者虐待が高い水準になっている要因として、次のように指摘します。
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日本福祉大学 湯原悦子教授
「介護に必要なさまざまな機関への問い合わせや申請などが必要で、介護する家族などがそうしたことができない人も多い。また医療の進歩によって長寿化が進み、それに伴って家族の介護をする期間も長期化していることが考えられ、介護疲れやストレスがたまってしまう状況もある。高齢者虐待は個人の問題ではなく、社会の状況によって起きていることだ。同じような状況の人を知り合うことは『この人は自分の状況を分かってくれるのでは』とみずからの境遇と重ね合わせることもでき、自分の介護に必要なことを学びとる上で非常に効果的だ。現状は介護者を支援する条例などは各地で作られ始めているが、全国的に広く介護者がみずからの生活を守るために使えるサービスを設けることが必要だ」
また高齢者に対する虐待の問題に詳しい日本大学文理学部の山田祐子教授は介護者が孤立を深めることは虐待につながる要因にあげ、次のように話しています。
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日本大学文理学部 山田祐子教授
「高齢者の介護は先の見通しが立たず、子育てと違って介護が必要な人はどんどん衰えていくため、介護する人は次第に精神的にも疲労が蓄積し孤立感を深めていくことが考えられる。介護スタッフなど関係する専門職が家族の疲労感に対してアンテナを高くはって、支援をしていくことが求められている。地域の人々による支援は欠かせないもので、介護する人を地域で支える仕組み作りは非常に重要で孤立の解消につながる。地域での支援が長期的に継続するよう行政が地域の資源として取り組みをバックアップすることが求められている」