千葉大学長選巡り、国際学術研究院執行部と理学研究院教授会も要望書 選考プロセスに反発(2024年2月20日『産経新聞』)

 
千葉大学医学部附属病院の横手幸太郎副院長

千葉大学の新学長選出を巡り、一部の教授会が選考過程が不透明だとして反発している問題で、15日付で同大大学院理学研究院教授会が、16日付で国際学術研究院の執行部が、選考にあたった「学長選考・監察会議」に対し、それぞれ要望書を提出したことが20日、分かった

要望書では現副学長で医学部付属病院長の横手幸太郎氏(60)を新学長に決めた選考過程の詳細の議事録公開などを求めた。

大学・大学院の教員らによる学内投票で、横手氏は1位の文学系の候補者に次ぐ2位だったが、1月25日に行われた学内外の14人による選考会議で新学長に決まった。

これに反発した大学院人文科学研究院や教育学部の各教授会も既に、選考会議に質問書を出す異例の事態が生じている。

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令和6年2月15日 
千葉大学学長選考・監察会議議長 殿 
千葉大学大学院理学研究院教授会 


要 望 書 


千葉大学学長選考・監察会議議長におかれましては、会議の運営にご尽力いただきありがとうございます。 
令和6年1月25日の学長選考・監察会議後の公示では、横手氏が学長となるべき者として示され、また、学内意向聴取結果として得票数1位が山田氏(534票)、2位が横手氏(446票)、3位が松原氏(350票)と公表されました。国立大学法人千葉大学学長選考規程には「学長選考・監察会議は、学長候補者の所信等を聴取のうえ、学内意向聴取の結果を参考にして、学長となるべき者1 名を選考する」(第16条の1)と定められています。得票数2位の方を学長に指名したことに対して、学内外から様々な声が挙がっています。学長選考・監察会議が、規程に則り高い見地に立って学長候補者を選出されたものと存じており、異論を差し挟むものではありませんが、新学長が本学構成員の支持を得て今後の運営を円滑に進める上で、選出理由を明瞭にされることは極めて重要と考えます。 
2 月7日に公表されました「学長となるべき者の選考について」では、【学内意向聴取を実施し、この結果を参考とするとともに、推薦内容及び学長候補者からの所信説明・質疑応答での候補者自身の大学に対する考えや将来ビジョン等の内容を確認し、これらを総合的に評価した。】と あ りますが、これは規則に則り選考したと受け取れます。理由の説明は、決定の根拠となる条文や規則を列挙するだけでは不十分であるというのは裁判所における判例にある通りで、規則に照らして横手氏が学長となるべきという判断に至った理由の説明が求められると考えます。十分な説明のためには、まず、詳細な議事録の速やかな開示が必要と考えます。新学長による大学運営が円滑に行われるには、新学長就任以前に開示されることが重要と思います。 
「学長となるべき者の選考について」の「学内意向聴取(意向投票)についての見解」には、【学長を必要な資質能力に関する客観的基準により、法律に則り意向投票によることなく選考することが推奨されている。】とありますが、根拠資料(2019年6月21日)には、「国は、各大学が学長、学部長等を必要な資質能力に関する客観基準により、法律に則り意向投票によることなく選考の上、自らの裁量による経営を可能とするため、授業料、学生定員等の弾力化等、新たな自主財源確保を可能とするなどの各種制度整備を早急に行う。」と提言しています。この提言の1年半後、文科省から出たもの(学内意向聴取(意向投票)についての見解の最初の根拠資料)には、「意向投票によることなく」という文言はなく、「意向投票の結果に拘束されることがあって
はならず」とあり、その後には、「意向投票を一つの手段として活用する場合には、学長候補者が学内構成員と確固たる信頼関係を築き、その下で強力なリーダーシップを発揮できる能力を有するかどうかの確認の参考とするなど、実施目的や位置付けを明確にして、説明責任を果たすべきである。」とあります。これは、文科省は、「意向投票によることなく」ということではなく、意向調査を上記のように活用すべきと通知したと考えるのが自然です。本学学長選考・監察会議の規則には、「学内意向聴取の結果を参考にして」とあるのみですが、「学内意向聴取(意向投票)についての見解」においてこの資料を根拠にしていますので、「意向投票の結果に拘束されることがあってはならず」と「意向投票を一つの手段として活用する場合には、学長候補者が学内構成員
と確固たる信頼関係を築き、その下で強力なリーダーシップを発揮できる能力を有するかどうかの確認の参考とする」は、本学学長選考・監察会議で確認されていると捉えることが自然と考えます。民主主義国家において投票1位の方が、確固たる信頼関係を築くのに最も相応しいということは論を待ちません。各委員には、学内構成員と確固たる信頼関係を築くこと以外の、どのような観点を重視したのかを具体的に説明していただけないでしょうか。また、学長選考・監察会議全体として横手氏の掲げるどのような政策を評価しているかを具体的に明らかにしていただきたいと存じます。これらを公表することは、選考の理由を具体的に示し、学内構成員の納得・信頼を得るために有効であるばかりでなく、学長選考・監察会議の考え方を示すことによって、どのような学長が望まれているのかを示すことにもなります。 
公明正大な教育研究機関である国立大学が、今後大学を運営する長として適格と判断された合理的な理由を明瞭に公表しないことは、信頼の損失や、憶測による噂を助長し、千葉大学の社会的価値を低下させる恐れがあります。一方で、学長選考・監察会議が十分な説明責任を果たすことは清廉な千葉大学を内外に示すことにつながります。 
以上をふまえ、下記の3項目について要望しますので、3 月15 日(金)を目処として、できるだけ速やかな回答をお願いします。これらは、学内構成員と次期学長との確固たる信頼関係を築き、次期執行部がリーダーシップを発揮するために必要な情報だと考えます。なお、本要望書は本研究院ホームページ上にて公開することを申し添えます。 

 

記 


1.学長選考・監察会議の詳細な議事録(発言者の内容を含む)の開示を、新学長就任以前にお願いします。 


2.各委員の、どのような観点を重視したのかの具体的な説明をお示しください。

 
3.千葉大学の「つねに、より高きものをめざして」という理念に基づき、学長選考・監察会議として横手氏の掲げるどのような政策を評価しているかを具体的に明らかにしてください。 

以上