核ごみ処分場の調査 幅広い議論が欠かせない(2024年2月18日『毎日新聞』-「社説」)

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分をどうするか。日本全体に突きつけられている課題だ。

 原子力発電環境整備機構(NUMO)が、北海道の2町村を対象に地質データや論文を分析した文献調査の結果を公表した。

 寿都(すっつ)町は全域、神恵内(かもえない)村は一部について、次の「概要調査地区の候補とする」と結論づけた。

 

北海道の寿都町と神恵内村の位置。2町村の間に泊原発が立地している 北海道の寿都町神恵内村の位置。2町村の間に泊原発が立地している

  処分場に適しているかを3段階で調べる仕組みが2000年に定められた。文献調査はその1段階目で、クリアするのは今回が初めてとなる。

 概要調査は実際に地質を詳しく調べる。地元自治体の首長に加え、知事の同意が必要だ。

 2町村の首長は現時点で態度を保留している。北海道の鈴木直道知事は、かねて否定的な立場を取ってきた。過去の火山活動などを理由に「適地ではない」と指摘する地質学者もいる。

 求められるのは、先入観を排した幅広い議論である。

 2町村では、概要調査への同意を問う住民投票を実施する案が浮上している。北海道だけに負担を押しつけるような現状への不信感も根強い。

 NUMOは今後、説明会を開く。長期間の安全性が保てるのかなど、懸念や疑問に誠実に答えるべきだ。

 02年の公募開始以来、高知、鹿児島、長崎などで応募に向けた動きが起きたが、いずれも住民らの反対で断念している。


 危険物を長期にわたって保管する「迷惑施設」を受け入れることへの抵抗感は理解できる。

 だが日本は多くの核のごみを抱える。最終処分の問題を避けて通ることはできない。

 政府は昨年、適地選定への関与を強めると決めた。既にいくつかの自治体を個別訪問したが、詳細は明らかにしていない。手続きの透明性を確保することが重要だ。

 地震の多い日本で適地を見つけるのは難しいとの見方もある。科学的知見を総動員して慎重に検討を進める必要がある。