核廃棄物処分場 地元の理解をいかに広げるか(2024年2月16日『読売新聞』-「社説」)

 原子力発電に伴って出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場を建設するには、地元の同意が必須となる。広く住民の理解を得ながら、着実に進めていくことが重要だ。

 原子力発電環境整備機構(NUMO)が、北海道の寿都町神恵内村で進めてきた「文献調査」の報告書案を公表した。調査では、3年以上かけて学術論文や地質データを分析し、2町村とも候補地になり得ると結論づけた。

 文献調査は、全体で20年かかるとされる手続きの第1段階だ。建設地選定に向けた手続きは一つの節目を迎えたと言えよう。

 今後、実際にボーリングなどを行う第2段階の「概要調査」を経て、最終段階の「精密調査」に進む手順になる。一歩一歩、地道に前進していくことが必要だ。

 今後、概要調査に移るには、両町村長と北海道知事の同意が必要になる。しかし、鈴木直道知事は現時点で、次の段階に進むことには反対の姿勢を示している。

 地域の将来像や、国のエネルギー政策上の重要性を考慮しつつ、冷静に議論してほしい。

 報告書案では、寿都町は全域が候補地とされた一方、神恵内村は、火山活動の影響を受ける可能性がある範囲を除外した結果、南端の一部のみが候補地となった。今後、地質調査が進めば、適地がさらに狭まることも考えられる。

 最適な場所を選定する観点からは、2町村以外にも名乗りを上げる自治体が増えることが望ましい。原子力発電の恩恵は全国民が受けている。処分場建設は、ごく少数の候補地だけの問題ではないことを認識する必要がある。

 長崎県対馬市では昨年、市議会が処分場誘致に意欲を示したが、市長は「市民の合意形成が不十分だ」などとして、文献調査への応募を見送った。その後、手を挙げる自治体は現れていない。

 首長が決断の重圧にさらされることが、自治体が誘致を ちゅう ちょ する理由の一つではないか。国が前面に出て全国の市町村に説明し、誘致に乗り出す自治体を増やしていくことが求められる。

 原発で使用した核燃料のうち、最後に残る廃棄物は、二重三重の覆いで包み、地下300メートル以上の地層に埋設する。これは世界でも認められた標準的な方法で、すでにフィンランドスウェーデンでは建設場所が決まっている。

 こうした経緯を紹介しながら、処分場施設の安全性や地域の産業振興について、国民の理解を深めてもらうことが大切だ。