「虎に翼」同時代の女性弁護士・中田正子展、鳥取で…「ここには私を必要とする人がいる」(2024年5月10日『読売新聞』)

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法律事務所の看板や標柱(鳥取市あおや郷土館で)
 
 日本初の女性弁護士の一人で、鳥取で半世紀以上、活動した中田正子さん(1910~2002年)の功績を紹介する企画展示が鳥取市内で行われている。NHK連続テレビ小説「虎に翼」の主人公のモデルになった女性と同じ時代を生き、法曹界を切り開いてきた。担当者は「鳥取に深いゆかりのある中田正子さんという一人の女性を知ってほしい」と願う。(林美佑)
 
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【写真】当時の弁護士は法服を着ていた。中田さんも着物に法服を身につけていたという(鳥取市あおや郷土館で)
 
 中田さんは弁護士法の改正後の1938年、同ドラマの主人公のモデルになった三淵嘉子さんら2人とともに高等文官司法科試験(現在の司法試験)に合格。40年、女性初の弁護士となった。改正前まで、国内では男性でなければ弁護士になることができなかった。
 45年、夫の実家のある若桜町に移り住み、その後、鳥取市に法律事務所を開業。鳥取県弁護士会会長などを務めた。「ここには私を必要とする人がいる」と、2002年に亡くなるまで鳥取での活動を選んだ。
 市あおや郷土館(青谷町)では、中田さんの法服や日記帳、法律事務所で使用していた資料など80点以上を展示し、その足跡をたどる。
 人権問題や裁判を取り上げた膨大な新聞の切り抜きや法律関係の書籍からは、中田さんが熱心に活動していた様子がわかる。依頼者の相談には親身に耳を傾け、時に慰め、時に叱りながらも「真実が一番強いから正直に言ってくださいね」とよく話した、というエピソードも紹介されている。
 学芸員の奥村寧子さんは「一貫して『依頼者の権利のために自分が戦う』という信念を持って突き進んだ女性だった」と力を込める。
 三淵さんとは、法学を学ぶために入学した明治大女子部などで、活動をともにした。三淵さんの訃報を受けた1984年当時の日記には「あんなに元気だったのに。3人の中、私1人が残るとは」との心境がつづられている。
 来館した湯梨浜町の女性(91)は「厳しい時代の中でも力強く生きた姿に感銘を受けた」と話していた。
 同ドラマの放送に合わせ、県立図書館(尚徳町)では、2階の展示コーナーに中田さんの関連図書を集める。
 ドラマに描かれた大正以降の六法全書や、中田さんの活動を紹介する本などを展示。また、中田さんらが通った明治大創立者の一人で県出身の岸本辰雄氏に関する本も並べる。司書の安藤理恵さんは「本を通じて理解を深めれば、ますますドラマも楽しくなるはず」と来館を呼びかける。
 郷土館の展示は19日まで(13日休館、無料)。図書館はドラマ終了までの予定。
講演と座談会
 県立博物館(東町)の講堂では12日午後1時半から、中田さんをテーマにした講演と座談会が開かれる。
 「鳥取県を舞台に!歴史大河ドラマを推進する会」の企画。郷土館の奥村さんが「日本で最初の女性弁護士中田正子」、同会の内田克彦共同代表が「弁護士法改正に動いた女性たち」の題でそれぞれ講演する。鳥取県へのドラマの誘致について語り合う座談会もある。
 申し込み不要。資料代100円が必要。問い合わせは同会の田中 精夫よしお さん(090・7132・5705)。
寄り添う精神受け継ぐ 県弁護士会マスコットに
 
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法服と眼鏡を身につけ、六法全書を持った「まさこ先生」=鳥取県弁護士会提供
 「ここには私を必要とする人がいる」。50年以上もの間、弁護士として市民に寄り添い続けた中田正子さんの精神は、今も鳥取の地に受け継がれている。県弁護士会のマスコットキャラクター「まさこ先生」は、その名の通り中田さんがモデル。亡くなった後の2016年3月に誕生した。
 日本初の女性弁護士の一人であり、着物に法服を着た姿が魅力的だったことが理由という。キャラクターに弁護士会と市民をつなぐ「架け橋」としての役割が期待されている。
 

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