「もしドラ」と「もしトラ」(2024年2月16日『山陰中央新報』-「明窓」)


バイデン米大統領(左)とトランプ前大統領(AP=共同


 「もしドラ」という言葉が流行したのが2010年のこと。その年のベストセラーになった岩崎夏海さんの小説で、映画やアニメ化もされた「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の略称である

▼マネジャーの仕事について学ぼうと、米国の経営学ドラッカーの著書『マネジメント』を書店で間違って買ってしまった主人公。ところが難解な内容を読み進めるうち、チーム運営にも生かせると気付く

ドラッカーが唱えたのが「顧客を満足させることこそ、企業の使命であり目的」という経営理念。主人公は企業を野球部に、顧客を「自分たちのプレーを見て感動してくれる人」に置き換えて目的を定めた。どの業界にも通じる考え方だ

▼あれから14年。「もしドラ」ならぬ「もしトラ」という言葉が世間でささやかれている。「もしトランプ氏が米大統領に返り咲いたら」の略称である。大統領選の共和党の指名争いで3連勝。世論調査では民主党のバイデン氏を上回る支持を集めており、11月の本選で再対決となれば雪辱を果たしそうな情勢らしい

▼トランプ氏にとっての顧客は熱烈な支持者か。その満足のため、同盟国にも強硬に接する「米国第一主義」が復活すれば、山陰両県でも製造業を中心に影響が出てくるだろう。選挙は水物とはいえ、まだ「もしトラ」と言えるうちに対策を練った方がよさそうだ。(健)