政倫審を開く気ある? 「人ごと」答弁の岸田首相に野党怒り 出席について聞かれた安倍派や二階派幹部は…(2024年2月15日『東京新聞』)

自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件の真相究明が進まない中、野党が求める衆参両院の政治倫理審査会(政倫審)の開催が焦点となっている。安倍派や二階派の幹部らは事件後に政治資金収支報告書を一斉に訂正したが、裏金づくりの状況や使い道など国民が納得の行く説明はされていない。野党から出席要求された自民の関係議員は、国会で自ら疑惑を払拭しようとしているのか。(大野暢子、佐藤裕介)
衆院予算委で立憲民主党の大西健介氏(左手前から3人目)の質問に答弁する岸田首相(右)=14日、国会で

衆院予算委で立憲民主党大西健介氏(左手前から3人目)の質問に答弁する岸田首相(右)=14日、国会で

 政治倫理審査会 ロッキード事件などを受け、1985年に衆参両院に設置。議員本人の申し出か、委員の3分の1以上が申し立てて出席委員の過半数が賛成すれば開催できる。証人喚問と異なり、発言は偽証罪に問われない。原則非公開だが、本人の了解があれば公開される。これまで衆院で8人の審査が行われた。参院では実施例がない。議決で開催を決めても議員を出席させる強制力はなく、2009年に衆院で当時の鳩山由紀夫民主党代表の政治資金虚偽記載問題で開催しようとしたが、鳩山氏は欠席した。

◆「自民に自浄能力なし」

 14日の衆院予算委員会の集中審議では、野党議員が党総裁である岸田文雄首相に対し、相次いで政倫審の開催を求めた。立憲民主党山井和則氏は「首相は『国会において決める』とか人ごとのようなことを言っている。開催を止めているのは自民党総裁の岸田首相だ。やる気ゼロだ」と追及した。
 立民の大西健介氏は「政倫審に出席しない議員に『次の選挙で公認しない』と厳しい態度で迫れば従うはずだ」と指摘。日本維新の会の美延映夫氏も「誰も率先して政倫審で説明しようとしない。自民には自浄能力がないと判断せざるをえない」と批判して首相の見解をただしたが、従来の答弁を繰り返すだけだった。
 野党が政倫審への出席を求めるのは、安倍派や二階派などで長年にわたって組織的な裏金づくりをしてきた経緯や、巨額の裏金の使い道が不透明なままで、関係議員が詳細な説明を避け続けているためだ。対象者には、安倍派の松野博一官房長官や高木毅前国対委員長萩生田光一政調会長塩谷立文部科学相下村博文政調会長二階派会長の二階俊博元幹事長らの名前が挙がっている。

◆「自ら開かせてと言うべきでは」

 出席を求められている関係議員は、どう対応する考えなのか。
 塩谷氏は本紙の取材に「分からない」と回答し、周囲には「もう現時点で説明すべきことは説明している」と話している。松野氏は「依頼があれば理由などによって判断したい」としているが、慎重姿勢であることには変わりない。高木氏や西村康稔経済産業相の事務所は「お答えできない」などとした。
 自民の浜田靖一国対委員長は、政倫審で議員が説明をすることは「なかなかハードルが高い」と後ろ向きな発言をしてきた。14日も記者団に「いろいろな可能性も含めて確認しないといけない。今答えるのは無理だ」と述べるにとどめた。
 所得税の確定申告が16日に始まることから、脱税の疑いも指摘される裏金事件への国民の批判や不満は強まる一方だ。共産党の田村智子委員長は記者会見で「自民に真相究明の意思があるなら、自ら政倫審を開かせてくれと言うべきではないか」と強調。野党からは予算委での参考人招致や証人喚問など徹底追及を求める声も上がっている。