ペットオークションで出生日偽装が常態化 ブリーダー行政指導も(2024年2月15日『毎日新聞』)

オークションで取引される子犬は小さければ小さいほど高値で取引されるという=関係者提供拡大
オークションで取引される子犬は小さければ小さいほど高値で取引されるという=関係者提供

 ペットオークションが開催される9道府県の全ての会場で、幼すぎる子犬・子猫の売買が常態化していたことが環境省への取材で判明した。動物愛護管理法は生後56日(8週齢)以下の子犬・子猫の販売を禁じている。この規制を逃れるため、子犬・子猫の出生日を偽装していたとみられ、複数の自治体がブリーダー(繁殖業者)を行政指導した。環境省は偽装を防ぐ手立てを検討している。

 ブリーダーが持ち寄った子犬・子猫は、オークション会場でペット販売業者によって競り落とされる。環境省の要請で、2023年11月、9道府県(北海道、宮城、埼玉、神奈川、栃木、静岡、愛知、大阪、福岡)の全19会場に自治体の職員が立ち入り検査を実施した。過去10年間に出品された子犬・子猫の出生日や体重などを記載した資料を入手。全国1000以上のブリーダーに対しても出生日や飼育状況を記録した台帳の提供を求めた。

 環境省は11月16~22日にオークション会場で出品された数千匹の記録を精査。全会場で、開催日付近に生後57日となる子犬・子猫が大半だったうえ、生後56日の平均体重を大きく下回るケースが多かった。ブリーダーが管理する台帳と販売業者との取引台帳で、出生日が異なるケースもあった。出生日の偽装を認めたブリーダーもおり、自治体が行政指導したという。

 ペット市場では、小さくて愛くるしい子犬・子猫が消費者に好まれるため、乳歯が生え出す生後4週前後で売買されることが多かった。一方で、子犬の場合、幼いうちに母犬と離すと感染症にかかるリスクや、「かみ癖」や「ほえ癖」などの問題行動を起こす可能性が高まる。このため、13年から生後45日(6週齢)以下の販売を禁じる週齢規制を導入。16年に49日(7週齢)以下、21年に56日(8週齢)以下となり、段階的に強化した。

 過去10年分の資料が残っていた4会場では13年から、オークションの開催日と、規制された週齢がほぼ一致する子犬・子猫が取引されており、出生日の偽装が繰り返されていたとみられる。出生日はブリーダーによる自己申告制で、帝王切開で生まれた場合を除き、獣医師ら第三者がチェックできない。

 一般社団法人「ペットフード協会」は23年の新規飼育数を計76万6000匹(犬39万7000匹、猫36万9000匹)と推計している。ペット業界関係者によると、取引は半数以上がペットオークションで競り落とされ、ペットショップの店頭に並ぶ。残りはブリーダーからの直販などで売買される。【宮城裕也】