天皇、皇后両陛下は9日、来日したケニアのルト大統領夫妻と皇居・宮殿で会見し、昼食を共にされた。昼食会(午餐)には天皇、皇后両陛下の長女、愛子さまが同席した。愛子さまが皇居で催された外国賓客との昼食会に出席したのは初めて。愛子さまが生まれた2001年から皇室番組の放送作家をするつげのり子氏は、「愛子さまの昼食会デビューは計り知れない存在意義があった」と話す。
* * 会見を終えたお昼過ぎ、天皇陛下がエスコートし、ルト大統領夫妻を招き入れた。大統領夫人の後方に雅子さま、秋篠宮さま、愛子さまと続き、それぞれの席の前へ。 愛子さまは、席まで颯爽と歩かれ、左隣のルト大統領、右隣の投資貿易産業長官に会釈をして席に座った。さっそく投資貿易産業長官に英語で話しかけられると、微笑みながら会話を楽しんでいた。 昼食会デビューは、柔らかい雰囲気をまといながらも、品格のある堂々としたものだった。 愛子さまが生まれた2001年から皇室番組の放送作家をするつげのり子氏は、愛子さまが昼食会デビューの一報を聞いたときに、天皇陛下の言葉を思い出したという。 「平成30年、天皇陛下(当時、皇太子殿下)はお誕生日の記者会見で、東宮御所にいらした外国からの来賓の方と愛子さまが、英語でお話しになっていることを明かされています。その当時、愛子さまは学習院女子高等科一年生でした」 その時、天皇陛下(当時、皇太子殿下)は、愛子さまの近況を質問され、こんな話をしている。
「愛子は,昨年4月に学習院女子高等科生として新たな一歩を踏み出しましたが、引き続き多くの友達と先生方に囲まれ、充実した高校生活を送っているようです。 そうした中で、関心もいろいろな方向に広がってきているようで、勉強面でもスポーツの面でも、また、社会に対しても,幅広く関心を示しています。 また、外国からのお客様が東宮御所にいらした時には、愛子も少しずつ英語でのお話に加わる機会が増えており、海外に対する関心も膨らませています」(皇太子殿下お誕生日に際し・平成30年より抜粋)
つげ氏はこの言葉を聞いたとき「英語でお話しに加わっているとは、“さすが、天皇陛下と雅子さまのお子さまだな”と思いました」と振り返り、だからこそ、今回の昼食会デビューが堂々としたものだったのかと感心する。 「ご両親が外国からの来賓と交流なさるときには愛子さまも同席され、高校一年生のころから少しずつ経験を重ねてこられていたんだと思います。
もちろん、今回のような公式の昼食会は初めてですが、高校時代にはイギリスに短期留学をされていたこともあるので、外国の方との交流は全く初めてではないわけです」
高校一年生からの積み重ねがあって、今回昼食会デビューとなったわけだ。まさに、研鑽の積み重ねの賜物。愛子さまが昼食会に出席した意図を、つげ氏はこう話す。 「愛子さまは、3月に学習院大学をご卒業後は日本赤十字社で嘱託職員として働きながら、公務もしていきます。
卒業後の進路が明確になったいま、天皇陛下も雅子さまも、国際親善というのは重要なテーマのひとつであると考えていらっしゃるので、各国の要人たちとお話をすることに慣れていってほしいとお考えなのではないでしょうか」
天皇陛下、雅子さま、そして愛子さまが揃うことで、公的な昼食会もプライベートな集まりに招かれたように感じ、リラックス効果を生む。しかも、天皇ご一家は、普段から3人お揃いでのお出ましも多く、仲もいいので自然と温かな気持ちにさせてくれるはずだ。
愛子さまがこうした場に同席するのには、「大いに意義がある」とつげ氏は話す。 「愛子さまが出席されることで、家族的なムードの中でおもてなしができると思います。愛子さまは天皇陛下と雅子さまの愛娘。そういう愛情に包まれたにこやかな方がいらっしゃると、おもてなしの場も和むと思います。
また、愛子さまが出席されることで、天皇陛下の父としての顔、雅子さまの母としての顔が見える瞬間もあるので、話題の幅が広がり、自然と会話が弾みます。 今回昼食会に来られたケニアのルト大統領は、7人のお子さんがいるそうですが、愛子さまがいらっしゃることで、自分の子どもたちのお話しをする機会もあったかもしれません。プライベートにまで話が広がって、まさに胸襟を開いて会話ができ、交流が深まるのではないかと想像できます。
家族的なおもてなしは、両国の友好関係が一層深まるきっかけになると思います。そういった理由から、今回のような国際親善という場において、愛子さまの存在は計り知れない意義があると思います」
大いに意義のあった今回の愛子さまの昼食会デビューだが、つげ氏は準備も家族で仲良く進めたのではないかと推察する。 「平成22年に天皇陛下(当時、皇太子さま)はガーナとケニアを訪問されています。そのときのお話を愛子さまにもされていると思います。
また、かつて雅子さまは国連大学のアフリカ関連のシンポジウムに参加されています。アフリカに関心がおありでした。 会話が多いご家族ですので、ケニアの話題だけでなくアフリカ全体の話などを愛子さまと3人でたくさんされて、準備を進められたのではないかと拝察されます」
今春から社会人として、さまざまな“デビュー”を経験されていくであろう愛子さま。その姿が楽しみでならない。(AERA dot.編集部・太田裕子) ◎つげのり子/放送作家、ノンフィクション作家。2001年の愛子さまご誕生以来皇室番組に携わり、テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟会員。著書に『天皇家250年の血脈』
(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。
太田裕子