2月9日、愛子さまが、ケニアのルト大統領夫妻を招いての昼食会(午餐)で「デビュー」された様子はメディアでたくさん報じられた。外国要人を招いた国際親善の昼食会に参加するのは初めてだったが、その立ち振る舞いは圧巻で、コメント欄やSNSは絶賛の声であふれた。
愛子さまは、なぜこれほどまでに素晴らしかったのか? マナーのプロに聞いた。
【写真】雅子さまと愛子さま、気品ある立ち姿が全く同じだった瞬間はこちら!
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愛子さまの昼食会デビューの姿は、報道の映像では2分間少々。
天皇陛下がエスコートし、ルト大統領夫妻を招き入れた。大統領夫人の後方に雅子さま、秋篠宮さま、愛子さまと続き、それぞれの席の前へ。
愛子さまは、左隣のルト大統領、右隣の投資貿易産業長官に会釈をして席に座った。
愛子さまは、まずはスワヒリ語で、 「ハバリ(ごきげんよう)」と、投資貿易産業長官に話しかけ、その後は英語で微笑みながら会話を楽しんでいた。
この愛子さまの昼食会デビューの映像を、思わず何回も見返した。柔らかい雰囲気をまといながらも、品格のある堂々としたお姿だった。
ニュースのコメント欄やSNSは、大いに沸いた。初々しいお姿は誰もが想像していたかもしれないが、実際の愛子さまはそんな想像をはるかに超えていたからだ。
〈圧倒的なオーラでしたね。 表情が豊かで映像を見ていて音声もないのに楽しんでいるのであろう、和やかな雰囲気が伝わってくる。〉 〈敬宮様がいらっしゃることでとても明るく華やかになり、皆が自然と敬宮様を目で追ってしまう…そんな存在感がありました。〉 〈敬宮様が、部屋に入られ、お席に着かれるまでのご様子を拝見し、ハットしました、何て、堂々と、でも、偉そうでなく自然にされている。 この自然さは、急にできる事ではありません。〉 〈愛子さまは本当に大物ですね。
まだ若い女性なのに、カメラや相手を意識することもなく、気取りも作り笑いもない。 常に自然な表情で、それがまた素敵なお顔で周囲は癒される。〉
愛子さまの立ち振る舞いを絶賛するコメントが並び、さらにはコメントに対する“共感”のクリック数が2.2万というものもあった。
愛子さまの昼食会デビューは、紀子さまの胃腸の不調による欠席のためのピンチヒッターだった。にも関わらず、想像を超える立ち振る舞いだったのはどうしてなのか?
大手企業のマナーコンサルティングやNHK大河ドラマ、映画などのマナー指導も務めるマナーコンサルタントの西出ひろ子氏も「本当に素晴らしかったですね」と愛子さまを絶賛する。
まず、西出氏が注目するのは愛子さまの「表情」だ。 「“笑顔を作る”という表現がありますが、愛子さまは作り笑顔ではなかったですよね。いい表情とは作るものではなく、大切なのは“心”です。
ルト大統領夫妻に対しての敬意であったり、隣に座られた投資貿易産業長官などと会話を楽しみながら有意義に過ごしたいという気持ちが自然に表れていたと思います」
■愛子さまの笑顔には心が
愛子さまの笑顔に心がこもっていたから、それが伝わったのではと西出氏は言う。 「とにかく形だけを整えようとするものであったなら、称賛の声はここまでは集まらないと思います。根幹にあるものは、やはり思いやりのある心の美しさでしょう。品格というものは心から表れるものですから、愛子さまの日頃の意識が、品格としても表れたと存じます。
天皇、皇后両陛下やその他の方からのアドバイスなどの学びもあるかとは存じますが、マナーの本質である相手中心とする思いやりの心が行動や言葉に表れることをご存知でいらっしゃるのだと感じました。日頃からそれらを意識し、実践なさっているからこそあそこまでの自然な振る舞いになったと思われます」
■愛子さまの優美な歩き方の真髄 西出氏が表情の次にあげるのは「歩き方」だ。 「愛子さまの堂々とした歩き方を拝見して、明治時代に刊行された書物、『國民日常大鑑』の中の〈新時代の礼儀〉の項にある“無用の遠慮”という言葉を思い出しました。 例えば、今回のような昼食会の席に着くときに、遠慮や謙遜から、つい前かがみになって歩いてしまったり、ペコペコしながら歩いてしまうことはあると思います。 “無用の遠慮”とは、新しい時代となり海外との交流もあるのだから、それまで国内では良しとされていることも相手によっては失礼にあたることを示しています。そして、それは新しい礼儀として、相手によってはいらない遠慮があることを教えてくれています」 まさに、愛子さまの立ち振る舞いには“無用の遠慮”の視点があったことがポイントだと西出氏は指摘する。 「“無用の遠慮”の視点は現代にも通じるところがあると感じました。私もインバウンドや異文化コミュニケーションなど国際的な舞台におけるマナーの研修などでお伝えしているのですが、海外の人に対してはペコペコしたお辞儀は好まれず、逆にマイナスになってしまうケースが多くあります。 愛子さまはこれらを踏まえたうえで、自然に堂々と歩かれていたのだと思われます」 西出氏は愛子さまの歩き方も、常日頃の意識の賜物だったと指摘する。さらに、着席された愛子さまのある動きも、見逃さなかった。
■愛子さまは自然に姿勢を
「愛子さまは、椅子の座面に軽く手をつけて腰を少し浮かせて、右隣の投資貿易産業長官の方に身体全体の向きを変えられたんです。
基本的に招く側はその右隣に座られた方と主に会話をし、もてなします。愛子さまはその方と向き合う姿勢を自然に取られていらしたのです。
これは私が講演などでも話している、『3つの“こ”』がそこには備わっていました。『3つの“こ”』とは、心の“こ”、言葉の“こ”、行動の“こ”。心は形として見たり聞いたりすることができません。だからそれを言葉と行動で表現するわけです。
相手に対して心があるから、相手の方に向き、そして相手の国の言葉を話す。愛子さまの振る舞いには、この三位一体が完璧に揃っていらっしゃいました」 少し腰を浮かして、話している相手の方を向いた愛子さま。その様子を見て、西出氏は思わずつぶやいてしまった言葉がある。
「雅子さまに、ホント、そっくり!」
親子であるから姿かたちが似ておられるというのももちろんあるだろう。だが、姿かたちだけでなく、物腰や佇まいも、お二人はよく似ている。愛子さまの左隣のルト大統領と会話される雅子さまは、愛子さまの雰囲気と重なって輝いて見えた。天皇陛下もそうだが、雅子さまはきらめく笑顔で、本当によく話しかけられているように見える。
西出氏は言う。
「愛子さまが日本赤十字社の嘱託職員に内定に寄せたコメントに、社会に貢献しながら、国民に寄り添う皇室としての役割をっていかれようとする強い気持ちを感じました。
そうした常の意識が、今回の昼食会デビューの圧巻の立ち振る舞いにもつながっていたと存じます」
この春から、愛子さまのさまざまな「デビュー」を拝見する機会が増える。そこからどんなお心が伝わってくるのか。愛子さまのご活躍が楽しみでならない。
(AERA dot.編集部・太田裕子)
◎西出ひろ子/マナーコンサルタント、マナー評論家、マナー解説者。大学卒業後、参議院議員秘書職を経て、マナー講師として独立。31歳で渡英。オックスフォード大学大学院遺伝子学研究者(当時)と英国にて起業。帰国後、企業のコンサルティングをはじめ、大河ドラマや映画、CMなどのマナー指導など多方面で活躍中。近著に「マナーのカリスマが大切にする 私スタイルの暮らし方」(主婦と生活社)など著書多数。