岡山県が15日から1カ月間解禁するツキノワグマの狩猟について、県内の狩猟者らに対して自粛を要請したことが14日、県への取材で分かった。2024年度はクマの出没件数が前年度を上回るペースで推移し、人的被害が懸念される一方、岡山、兵庫、鳥取県にまたがる「東中国地域個体群」の捕獲数が24年度、設定している上限(120頭)を超えており、急速な個体数の減少を回避して生態系のバランスを保つ。自粛要請は17年度に狩猟を解禁して以降初めて。
東中国地域個体群は1991年に環境省のレッドデータブックで絶滅の恐れが指摘され、岡山県は2000年に狩猟を禁止。集落近くなどに繰り返し出没した個体を県の許可を得て殺処分する「有害捕獲」のみを認めていた。その後、個体数が回復して人の生活圏への出没が目立つようになり、17年度からは有害捕獲に加え、銃による狩猟を11月15日から1カ月間限定で解禁している。
一方、県では毎年度、クマの生息数に基づき捕獲上限数を設定。24年度の東中国地域個体群の推定生息数は805頭で、群れが安定的に存続している基準の800頭を上回ったことから、国のガイドライン(生息数の15%以下)の最大値に当たる120頭を上限と定めていた。
生息域の地図
県によると、狩猟解禁を控えた10月中旬、個体群全体の捕獲数を確認したところ、127頭(岡山13頭、兵庫61頭、鳥取53頭)と上限を超えていることが判明。岡山県は11月1日付で県猟友会に狩猟の自粛を求める文書を送り、会員への周知を求めた。兵庫、鳥取県も同様の対応を講じたという。
岡山県内の24年度の出没件数は123件(13日時点)で既に前年度の119件を上回り、クマと遭遇する危険性は高まっている。県自然環境課は「保護の観点から狩猟の自粛を求めるが、人的被害の防止が最優先。有害捕獲の推進といった対策に継続して取り組む」としている。