政策決定、野党が影響力 与党事前審査に変化(2024年11月15日『時事通信』)

 衆院過半数を占める政党がない「宙づり議会(ハングパーラメントhung parliament)」は、これまでの政策決定のプロセスを大きく変えそうだ。自民、公明両党による予算案や法案の「事前審査」に代わり、野党との協議が大きな影響力を持つのは必至。形骸化が指摘され続けてきた国会論戦の活性化につながる可能性もある。
  「これまでと比べて大幅に変わる。各党の主張が法案や予算案の修正という形に収斂(しゅうれん)していく」。立憲民主党重徳和彦政調会長は14日の記者会見で、国会運営の主導権確保に意欲を示した。 
 事前審査は、政府が国会に提出予定の予算案や法案について、与党が政務調査会の下に置かれた各部会などであらかじめ議論し、意見を反映させる仕組み。了承された場合、与党は党議拘束を掛け、修正を求めず賛成してきた。
 ただ、与党が衆院過半数を失ったことで、予算案や法案の成立には、野党の協力が欠かせなくなった。衆院選で躍進した国民民主党玉木雄一郎代表は早速、「これまでは自公で了承されれば国会で確実に通るルールだったが、(今後は)自公以外の意見も聞かないと過半数は取れない」とけん制する。
 時の首相も口出しができない「聖域」と呼ばれた自民党税制調査会も例外ではない。14日には、国民民主と年末の税制改正に向けた協議をスタート。同党の求める「年収103万円の壁」見直しの検討を進めざるを得なくなった。
 国会審議も様変わりしそうだ。立民の野田佳彦代表は「熟議で決め、議論は公開。国会審議の活性化を促したい」と強調。予算案などに野党の主張を反映させるよう、論戦を通じて政府・与党に迫る構えだ。
 今回、立民は衆院の予算委員長や法務委員長などのポストを獲得。審議時間の確保や、政府資料の提出などで、野党の要求が通りやすい環境が整った。自民内で慎重論の根強い選択的夫婦別姓の実現や、同性婚の法制化などの議論が、野党の主導で進むことも想定される。

政府、臨時国会28日に召集 補正予算・政治改革を議論(2024年11月14日『時事通信』)
 
 政府は14日、臨時国会を28日に召集する方針を固め、自民党幹部に伝えた。総合経済対策の裏付けとなる2024年度補正予算案や、自民党派閥裏金事件に関する政治資金規正法の再改正を審議する予定。少数与党として野党の協力を得て円滑な国会運営を進められるかが問われる。
 自民は、石破茂首相による所信表明演説を29日に、各党の代表質問を12月2~4日に行う日程を検討している。野党側は補正予算案の審議前に衆参両院予算委員会を開くよう求めている。与党側は同5、6両日に行い、9日から補正予算案の審議に入りたい意向だ。
 首相は14日、同党の森山裕幹事長、坂本哲志国対委員長と東京都内の日本料理店で昼食を共にした。同日夕の南米出発を前に、臨時国会の日程を含め、今後の国会運営について協議。林芳正官房長官が同席した。
 政府・与党は当初、12月初旬の召集を検討したが、早期召集を求める野党側に配慮した。これにより臨時国会前の閉会中審査は開かれない見通しだ。
 与野党9党1会派は14日、国会内で国対委員長会談を開いた。国会議員に月100万円支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の見直しに関し、野党側は使途公開基準の議論を直ちに始め、臨時国会で法改正すべきだと主張。坂本氏は「しっかり受け止める」と答えた。
 野党は、補正の審議時間を長く確保することや、裏金事件に関する政治倫理審査会の開催も要求。衆院選での与党過半数割れを受け、予算案や法案の成立には野党側の協力が必要となる。衆院の予算委員長や政治改革特別委員長などのポストは立憲民主党が獲得し、与党側は一定の譲歩を迫られそうだ。