秋篠宮家へのバッシングの発端は「眞子さんの結婚」ではない…情報発信がことごとく裏目に出る本当の理由(2024年10月2日『プレジデントオンライン』)

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58歳の誕生日を迎え、天皇、皇后両陛下にあいさつをするため皇居に入られる秋篠宮紀子さま。2024年9月11日午前、半蔵門 - 写真=共同通信社
ネットでは次々に秋篠宮家へのバッシングが起きている。なぜなのか。武蔵大学社会学部教授の千田有紀さんは「発端は、長女の眞子さんの結婚だと思われているようだが、実は違うのではないか。最近は、宮内庁でも情報発信に力を入れているようだが、それは逆効果になるように思う。むしろ露出を減らす方が、イメージアップにつながるのではないか」という――。
■「バッシングで辛い思いをしている人が多くいるのではないか」
 秋篠宮妃の紀子さまは9月11日、58歳の誕生日を迎え、記者からの質問に文書で回答された。
 その中で、「ネット上などで秋篠宮家へのバッシングともとれる情報による批判が続いている状況をどう受け止めているか」という質問に対し、紀子さまは、「ネット上でのバッシングによって、辛い思いをしている人が多くいるのではないかと案じています」と国民に心を寄せ、「私たち家族がこうした状況に直面したときには、心穏やかに過ごすことが難しく、思い悩むことがあります」と苦しい心情を吐露されている。お気の毒である。
 皇室では、つねに誰かがバッシングされる傾向がある。とくに「嫁」の立場となる女性が対象となることが多い。
 平成の時代には、雅子さまがバッシングの対象になり、近年では秋篠宮家、とくに紀子さまがバッシングされやすくなっている。ご自身が辛い状況にあっても、「辛い思いをしている」ほかのひとにまで思いをはせてくださるあたり、紀子さまのご配慮がにじみ出るようである。
宮内庁が「情報発信強化」の方針
 紀子さまの誕生日と同じ日に、宮内庁の西村泰彦長官が定例の記者会見で、秋篠宮家に対するネットでのバッシングに対しては「必要に応じて対応をとる」と発言したという。
 また、宮内庁は8月30日に2025年度予算の概算要求を公表しており、この中で、SNSの情報発信強化などの費用として、2025年度予算に3400万円を計上し、現在の広報担当職員の10人に加えて3人を増員することを求めている。さらにSNS向けの写真や動画撮影をカメラマンに委託したり、広告代理店との提携もしたりするという。
 こうした動きは、またネット上で物議を呼んでいる。2年ほど前には、秋篠宮邸の改修費が高額だったとして批判の声が上がっていたが、さらにこうしたSNS対応予算がかけられることに対し、「税金の無駄遣いではないか」と、また批判を招いてしまったようだ。さらに「そんなお金があるならば、愛子さまに新しいティアラを購入してあげてほしい」と、天皇家と比較される結果となってしまってもいる。
■イメージアップの記事でバッシングは止まるのか
 9月17日のデイリー新潮には、秋篠宮家へのバッシングは、「結果的に“あの結婚”を止められなかったことへの世間の不満」であり、「それまで順調に歩んでこられた一家だっただけに」という国民の失望があるのではないかという宮内庁関係者の談話があった。
 それを読んで、アッと思った。
 眞子さまの結婚騒動が発端なのだから、なんとかイメージアップにつながる記事を出せば、秋篠宮家のバッシングが止まると考えられているのかもしれない。しかしながら、それは逆効果でしかない。
 残念なことに、秋篠宮家バッシングの根は、眞子さまの結婚にあるわけではないように思う。あれはたんなるきっかけにすぎないのではないか。私のような皇室ファンで、ずっと皇室をウォッチしている者から見れば、問題の根はむしろ、平成の時代に秋篠宮家が称賛されすぎていたことにあると思われる。まさに「順調」すぎたのだ。
■2004年の秋篠宮ご夫妻の発言
 平成の御代では、雅子さまが体調を崩された。2004年11月、当時は皇太子であった天皇陛下の「雅子さまへの人格否定発言」のあとの記者会見で、秋篠宮さまは「天皇陛下(現上皇陛下)に事前に相談しなかったことは残念」と現天皇陛下を批判された。また紀子さまも、「結婚してからの生活は、新しく出会う務めや初めて経験する慣習などが多くございました。どのように務めを果たしたらよいか、至らない点をどのように改めたらよいかなど、不安や戸惑いなどもございましたが、その都度人々に支えられ、試行錯誤をしながら経験を積み、一つ一つを努めてまいりました」と、それができなかった雅子さまを暗に批判するとも受け止められかねない発言をされている。
 もちろん当時の秋篠宮ご夫妻の発言は、現上皇陛下を「守る」ためのものであると絶賛されていた。しかし現天皇陛下から見れば、なんとか妻を守ろうとして勇気を奮った発言を、弟からまで批判されて、孤立させられるかたちになってしまったとも見えるだろう。何ともお気の毒である。こうした出来事の積み重ねのうえに、現在の秋篠宮ご夫妻への風当たりがあるようにも思う。
■イメージアップの記事でバッシングは止まるのか
 9月17日のデイリー新潮には、秋篠宮家へのバッシングは、「結果的に“あの結婚”を止められなかったことへの世間の不満」であり、「それまで順調に歩んでこられた一家だっただけに」という国民の失望があるのではないかという宮内庁関係者の談話があった。
 それを読んで、アッと思った。
 眞子さまの結婚騒動が発端なのだから、なんとかイメージアップにつながる記事を出せば、秋篠宮家のバッシングが止まると考えられているのかもしれない。しかしながら、それは逆効果でしかない。
 残念なことに、秋篠宮家バッシングの根は、眞子さまの結婚にあるわけではないように思う。あれはたんなるきっかけにすぎないのではないか。私のような皇室ファンで、ずっと皇室をウォッチしている者から見れば、問題の根はむしろ、平成の時代に秋篠宮家が称賛されすぎていたことにあると思われる。まさに「順調」すぎたのだ。
■2004年の秋篠宮ご夫妻の発言
 平成の御代では、雅子さまが体調を崩された。2004年11月、当時は皇太子であった天皇陛下の「雅子さまへの人格否定発言」のあとの記者会見で、秋篠宮さまは「天皇陛下(現上皇陛下)に事前に相談しなかったことは残念」と現天皇陛下を批判された。また紀子さまも、「結婚してからの生活は、新しく出会う務めや初めて経験する慣習などが多くございました。どのように務めを果たしたらよいか、至らない点をどのように改めたらよいかなど、不安や戸惑いなどもございましたが、その都度人々に支えられ、試行錯誤をしながら経験を積み、一つ一つを努めてまいりました」と、それができなかった雅子さまを暗に批判するとも受け止められかねない発言をされている。
 もちろん当時の秋篠宮ご夫妻の発言は、現上皇陛下を「守る」ためのものであると絶賛されていた。しかし現天皇陛下から見れば、なんとか妻を守ろうとして勇気を奮った発言を、弟からまで批判されて、孤立させられるかたちになってしまったとも見えるだろう。何ともお気の毒である。こうした出来事の積み重ねのうえに、現在の秋篠宮ご夫妻への風当たりがあるようにも思う。
■情報発信を増やすことが解決になるのか
 現在の秋篠宮家は、「何をしても批判される」といった状況になってしまっている。紀子さまがお誕生日にあたっての文書を発表された後の9月15日には、能登半島地震で被災した石川県珠洲市で健康診断の準備を手伝われた様子が報道されたが、それさえも「あざとい」とかえって不興を買う始末であった。
 最近は、秋篠宮家に関する報道が増えているように感じる。バッシングが続いていることを受けて、イメージアップを図ろうとしているのではないかとも推測してしまう。例えば9月13日には、秋篠宮ご夫妻がトルコを訪問されることが決まったと報じられたが、これについてネット上では「速報」で出すようなニュースだろうかといった意見が見られた。
 個人的には、SNSに予算を投下して露出を増やすよりも、むしろ露出を減らすほうが良いのではないかとさえ思う。今は、天皇陛下を中心とした皇室を支えようという、静かな姿勢を維持し、取り立てて情報発信などの対策をしないほうが、イメージアップにつながるのではないだろうか。
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千田 有紀(せんだ・ゆき)
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1968年生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。東京外国語大学国語学部准教授、コロンビア大学の客員研究員などを経て、武蔵大学社会学部教授。専門は現代社会学。家族、ジェンダーセクシュアリティ、格差、サブカルチャーなど対象は多岐にわたる。著作は『日本型近代家族―どこから来てどこへ行くのか』、『女性学/男性学』、共著に『ジェンダー論をつかむ』など多数。ヤフー個人