米大統領選討論会 ハリス、トランプ両氏が論戦 冒頭では握手も(2024年9月11日『毎日新聞』)

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米大統領選候補者のテレビ討論会に参加した共和党のトランプ前大統領(左)と民主党のハリス副大統領=米フィラデルフィアで2024年9月10日、AP
 11月の米大統領選に向けた主要候補のテレビ討論会が10日夜(日本時間11日午前)、東部ペンシルベニア州フィラデルフィアで始まった。世論調査では接戦が続く民主党のカマラ・ハリス副大統領(59)と共和党ドナルド・トランプ前大統領(78)が初の直接対決に臨んだ。態度を決めていない接戦州の有権者無党派層を意識し、経済や移民、人工妊娠中絶など主要テーマを巡って論戦を繰り広げた。
 ハリス氏は、7月に選挙戦から撤退したジョー・バイデン大統領(81)の主要政策を引き継ぎながら、候補の若返りを生かして「未来への新たな道」を訴えている。討論会では「私は中間層の家庭で育った。この壇上にいて、米国の中間層や労働者を引き上げる計画を持っているのは私だけだ」と強調。子育て世帯への税制優遇策や住宅購入支援の具体策を訴える一方で、大企業や富裕層への増税を提唱した。
 また、中絶を選ぶ権利を擁護する姿勢も強調した。トランプ氏を「国民を気にかけるよりも、自分自身を守ることに関心のある人物だ」と批判した。
 トランプ氏は「(バイデン政権で)経済状況はひどい状態が続いてきた。ほんの数年前よりも物価はひどく上がった。彼女には計画はなく、バイデン氏の計画をコピーしているだけだ」とインフレを批判した。
 さらに外国製品の輸入にかかる関税を引き上げることで、米国企業を保護する姿勢を強調。インフレを助長するとの指摘に対しては「そんなことはない」と反論した。メキシコとの国境からの不法越境が増加したことについて「受刑者や精神疾患のある人まで米国に入ってきて、米国民の仕事を奪った。犯罪行為もひどい」と持論を展開。不法移民と犯罪の増加の因果関係は明確ではないが、トランプ氏は「彼らを追い出さなければならない」と不法移民の国外追放を訴えた。
 2人は今回の討論会が初対面となった。冒頭では、演壇に直接向かおうとしたトランプ氏にハリス氏が歩み寄って握手を交わす場面もあった。相手の発言機会にはマイクが消音されるルールとなり、トランプ氏は不規則発言を抑制した。お互いに相手の発言に納得がいかない場合、首を振ることで「異議がある」との意思を表した。
 今回の選挙戦は当初、2020年大統領選に続くバイデン、トランプ両氏の再対決の構図だった。しかし、バイデン氏が6月の討論会で高齢不安を露呈し、党内からの圧力を受けて7月に出馬断念を表明。8月にハリス氏が党候補指名を受け、約3カ月間の異例の短期決戦に突入した。
 政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の各種世論調査の集計(10日時点)によると、「1対1」を想定した場合の支持率はハリス氏48・4%、トランプ氏47・3%と伯仲している。候補差し替えによって民主党内の熱気が高まり、ハリス氏が8月上旬にトランプ氏を逆転したが、8月下旬以降は僅差の状況が続いている。【ワシントン秋山信一】

トランプ氏、移民問題で「何百万人もの犯罪者」が入国したと主張(2024年9月11日『毎日新聞』)
 
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討論会で議論する共和党のトランプ前大統領と民主党のハリス副大統領=米東部ペンシルベニア州フィラデルフィアで10日、ロイター
 米大統領選に向けた10日の候補者討論会で、共和党のトランプ前大統領(78)は争点の一つである不法移民問題について、バイデン政権が「何百万人もの犯罪者やテロリスト」の越境を許したため、治安が悪化したと主張した。また、トランプ氏は移民の流入により「ここ(米国)以外の世界では犯罪が減った」と述べた。
 一方、民主党のハリス副大統領(59)は、超党派で合意していた国境警備の法案を巡り、トランプ氏が「廃案にしろ」と保守派の議員らに圧力をかけたと強調。移民流入の責任は、トランプ氏にあるとの見方を示した。

ハリス氏、人工妊娠中絶巡り「トランプ氏は指図すべきでない」(2024年9月11日『毎日新聞』)
 
キャプチャ米大統領選に向けたテレビ討論会に臨む民主党のハリス副大統領=米東部ペンシルベニア州フィラデルフィアで10日、AP
 11月の米大統領選に向けた候補者討論会で、民主党のカマラ・ハリス副大統領(59)は人工妊娠中絶を巡るやりとりの中で、隣に立つ共和党ドナルド・トランプ前大統領(78)に対し、「政府とドナルド・トランプ(氏)は、女性が自分の体をどうするか指図すべきではない」と語った。
 米国では、連邦最高裁が1973年に人工妊娠中絶を憲法上の権利だと認める判断を示した。しかし、トランプ氏が大統領在任中に保守派判事3人を指名したことで保守化した最高裁は2022年6月、憲法判断を49年ぶりに覆し、各州の判断で中絶を禁止することを容認した。
 トランプ氏は最高裁判断について「勇気ある決断」と評価した。これに対し、ハリス氏は、連邦議会が中絶の権利を回復する法案を可決すれば、「大統領として誇りを持って署名する」と強調。さらに「トランプ(氏)が再選されれば、中絶禁止法案に署名するだろう」と批判したが、トランプ氏は「うそだ。禁止法に署名しない」と反論した。【ワシントン西田進一郎】

トランプ氏、「精神科病院」にいた移民が国境を越えて流入と発言(2024年9月11日『毎日新聞
 
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米大統領選に向けたテレビ討論会に臨む共和党のトランプ前大統領=米東部ペンシルベニア州フィラデルフィアで10日、ロイター
 米大統領選に向けた10日の候補者討論会で、共和党のトランプ前大統領は、「精神科病院」にいた移民がメキシコと接する国境を越えて米国内に入り込んでいると主張した。根拠は示さなかった。
 トランプ氏は大統領在任時、メキシコとの国境沿いに「壁」の建設を始めるなど反移民的な政策を進めた。今回も当選すれば、大勢の不法移民を強制送還するなどの方針を打ち出している。【ニューヨーク中村聡也】

ハリス氏が呼びかけ「トランプ氏の集会に行ってみて」 その心は?(2024年9月11日『毎日新聞』)
 
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米大統領選に向けたテレビ討論会で発言する民主党のハリス副大統領=米東部ペンシルベニア州フィラデルフィアで10日、AP
 米大統領選に向けた10日の候補者討論会で、民主党のハリス副大統領(59)は、共和党のトランプ前大統領(78)の集会に足を運んでほしいと異例の呼びかけをした。
 ハリス氏は、トランプ氏が演説で「風車ががんを引き起こす」などの根拠の乏しい話を続けると指摘。カメラに視線を向けて、視聴者にトランプ氏の集会に行ってほしいと語りかけ、「参加者は疲労と退屈から早々と会場を出る」と付け加えた。【ニューヨーク八田浩輔】