米大統領選 TV討論会終わる 両者の主な発言は(2024年9月11日『NHKニュース』)

 

アメリカ大統領選挙に向けた、ハリス副大統領とトランプ前大統領によるテレビ討論会が始まりました。両者が直接、論戦を交わすのは初めてであるのと同時に、今回が選挙前、唯一の機会になる可能性があるとアメリカメディアは伝えていて、関心が高まっています。

《双方の発言》

中東情勢 ハリス氏「イスラエルには自衛する権利ある」

中東情勢をめぐり、ハリス氏は「イスラエルには自衛する権利がある。どのように行うかが問題だ。なぜなら、あまりにも多くの罪のないパレスチナ人や子ども、母親が殺されているからだ。この戦争はすぐに終わらせなければならない。そのためには停戦に向けた合意が必要であり、人質が解放されなければならない」と述べました。

トランプ氏「流入してきた人たち 猫や犬を食べている」

トランプ氏は「数百万人が刑務所や精神科の病院からわれわれの国に流入している」と述べた上で、「オハイオ州スプリングフィールドでは彼らは犬を食べている。流入してきた人たちが猫を食べている。そこに住む人々のペットを食べている。これが、いまこの国で起きていることだ」と述べました。

これについて司会を務めるABCのアンカーから、「はっきりさせておきたい。ABCとしてスプリングフィールドの担当者に連絡したところ、移民のコミュニティによってペットが危険な目にあったり虐待されたりしているという報告はないと話していた」と指摘される場面がありました。

ハリス氏「国境警備の法案 トランプ氏が廃案にしろと言った」

ハリス氏は「わたしは銃や麻薬、人身売買の国際犯罪組織を起訴してきた」と強調しました。そして、国境管理や移民政策について「上院の保守的な議員を含む議会は国境警備の法案を提出し、わたしはそれを支持した。この法案では国境警備隊が増員され、銃や麻薬、人身売買を行う国際犯罪組織を起訴するための資源を確保することができたはずだ」と述べました。そのうえで「トランプ氏が議員に電話をかけ、法案を廃案にしろと言った」と批判しました。

トランプ氏「司法省を武器として使った」

トランプ氏は、不倫の口止め料をめぐって業務記録を改ざんした罪に問われたニューヨーク州の裁判で有罪の評決が下されたことなどを念頭に、「司法省を武器として使った。この国でかつて起きたことはない、選挙に勝つために利用した。これは偽りの事件だ」と述べました。

ハリス氏「トランプ氏は司法省を利用すると公言」

ハリス氏は3年前に起きた議会乱入事件をめぐり、起訴されたトランプ氏の刑事責任について、連邦最高裁判所がことし7月「大統領在任中の公務としての行動は免責される」という判断を示したことを指摘した上で、「トランプ氏は憲法を廃止し、政敵に対して司法省を利用すると公言している人物だ。ガードレールがない状態で、トランプ氏がホワイトハウスに戻ったら何が起きるのか理解してほしい。間違いなく裁判所はトランプ氏を止めようとしない」と述べました。

《トランプ氏の発言》

「大幅な減税を実施」

トランプ氏は「私が何をしようとしているかは誰もが知っている。大幅な減税を実施し大統領在任中に行ったように、素晴らしい経済を作り上げる。新型コロナの感染拡大によって多くの人が命を落としたが、私たちはコロナ禍において素晴らしい仕事を行った」と述べました。

「私は歴史上、最も偉大な経済を築き上げた」

トランプ氏は自らが大統領在任時には「関税はあったがインフレはなかった。インフレは国を崩壊させるもので、おそらくアメリカ史上最悪のインフレを招いた」とバイデン大統領とハリス副大統領の政権を批判した上で「私は歴史上、最も偉大な経済を築き上げた。それを再び実現する」と述べました。

《ハリス氏の発言》

「AI・量子コンピューターの技術への投資に注力」

ハリス氏は「トランプ氏はアメリカの半導体を中国に売り渡し、中国が軍備を向上させることを手助けした。わたしは同盟国との関係を重視し、AIや量子コンピューターの競争に勝つために技術への投資に力を入れ、アメリカの労働者が不利になることがないよう必要なことに注力する」と述べました。

「トランプ氏がもたらした混乱を一掃」

「トランプ氏はわたしたちの民主主義に対し、南北戦争以来で最悪の攻撃をした。わたしたちが行ったのは、トランプ氏がもたらした混乱を一掃することだった」と述べました。

「中間層と労働者を引き上げる計画」

「中間層と労働者を引き上げるための計画を持っているのは私だけだ」とした上で、若い世帯が子どもを育てるための支援が必要だと強調しました。また「トランプ氏の経済政策は、富裕層や大企業に減税策を提供することだ。中間層には年間4000ドル以上の負担増になる」と指摘しました。

11月のアメリカ大統領選挙に向けた民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領によるテレビ討論会は、激戦州のひとつ、東部ペンシルベニア州の最大都市フィラデルフィアで日本時間の午前10時から始まりました。

両者が直接、論戦を交わすのは初めてで、現時点でほかに討論会の予定はなく、アメリカメディアは「今回が大統領選挙前、唯一の機会となる可能性がある」と報じています。

全米を対象にした各種世論調査の平均では、ハリス氏とトランプ氏の支持率はきっ抗しています。

ハリス氏は急きょ大統領候補となってから公式な記者会見を開いておらず、人物像や政策が有権者に浸透していないという指摘も出ています。

このため、討論会で大統領としての資質や実現したい政策を明確に印象づけられるのか注目されています。

一方のトランプ氏は、2016年以来、今回が通算7回目の党の大統領候補としてのテレビ討論会です。

トランプ氏はインフレや移民問題といった、国民のあいだで不満が根強い分野で、ハリス氏の責任を追及していく構えです。

討論会でのパフォーマンスは2か月を切った残りの選挙戦の流れを変える可能性もあり、関心が高まっています。