能登半島地震で被災した建物を取り壊す公費解体工事で、発がん性があるアスベスト(石綿)の飛散防止策が不十分な解体業者が目立っている。石川労働局は一部業者に改善を求める行政指導をし、業界団体にも対策の徹底を求めた。労働局の担当者は「早急な復旧復興は、工事を担う人の健康があってこそ。周辺住民への影響を防ぐためにも適切に作業してほしい」と呼びかけている。
解体作業中、防塵マスクを着用しながら散水する作業員=石川県能登町鵜川で
◆「自分の命は自分で守らないと」
「暑くて息苦しいが、法律で決まっているので仕方ない。自分の命は自分で守らないと」
石川県能登町で8月下旬、木造住宅の公費解体を手掛けていた業者「ショウイン」(京都市伏見区)の現場責任者、荻原健二さん(52)が汗をぬぐった。数人の作業員とともに石綿の吸い込みを防ぐマスクや目を守るフェースガードを装着。粉じんが舞うのを防ぐために水をまきながら、重機で住宅の基礎部分を壊していった。
◆石綿調査と対策は義務だが…
労働局によると、解体現場では石綿が建物に含まれているかどうかの事前調査や、含まれていた場合はマスクをしたり、水をまくなどの飛散防止をしたりすることが法律で義務付けられている。だが、労働局がパトロールをしたところ、規則を守っていない業者を複数確認したという。
防塵マスクや目を守るシールドを装着する作業員=石川県能登町鵜川で
労働局は業界団体「石川県構造物解体協会」に、石綿対策の徹底を求める文書を渡した。協会担当者は「各所に周知し、対策の徹底を図りたい」と話した。