能登半島地震から5か月 公費解体完了は約2% 手続きに時間(2024年6月1日『NHKニュース』)

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能登半島地震の発生から1日で5か月です。石川県内の被災地では建物の解体や撤去を行政が費用を負担して行う「公費解体」が始まっていますが、手続きに時間がかかることなどから、完了したのは申請があった数のおよそ2%にとどまっています。
能登半島地震で石川県内では先月28日の時点で2万4612棟の建物が全半壊し、これらの建物の解体や撤去を行政が費用を負担して行う「公費解体」が先月から本格的に始まっています。
県によりますと、先月26日の時点で県内の15の市と町のあわせて1万5614棟で申請が出されていますが、解体・撤去が完了したのは346棟とおよそ2%にとどまっています。
特に被害が大きかった奥能登地域の市と町によりますと解体・撤去が完了したのは31日時点で、
輪島市で4692棟の申請に対し1棟、
珠洲市で3432棟の申請に対し105棟、
穴水町で1829棟の申請に対し54棟、
能登町で1285棟の申請に対し17棟となっています。
自治体や解体の委託業者などによりますと公費解体を進めるうえで課題となっているのは、土地や建物の所有者の特定や自治体での事務作業など、手続きに時間がかかることや、解体業者の不足、災害廃棄物の置き場の不足などだということです。
こうした状況から国は、建物の「滅失」を登記することで所有者全員を特定して同意を得なくても公費解体を申請できるようにしていて、県も今後、事業者の宿泊場所を確保するなどして解体を加速させたいとしています。
”請け負えるのは2週間に1件ほど”
珠洲市正院町では、住宅の解体工事の様子が各地で見られます。
2階建ての木造住宅の解体現場では、金沢市の建設会社の作業員4人が重機で建物を壊し、トラックに乗せて運び出していました。
この会社ではあわせて5人の従業員がいて、先月から公費解体を始めましたが、人手に限りがあり請け負えるのは2週間に1件ほどだということです。
現場責任者の土井洋平さんは「自分たちの仕事で1日でも早く被災地が通常の姿に戻っていってほしい」と話していました。
申請窓口に多くの住民訪れる
地震の発生から5か月たった1日も、石川県輪島市の公費解体の申請窓口には多くの住民が申請に訪れていました。
輪島市では、市内3か所に公費解体の申請窓口を設け、休日も申請を受け付けていて、1日も市役所に設置された窓口には朝から多くの人が訪れ、職員から今後の手続きなどの説明を受けていました。
市によりますと、1日午前中だけで18件の相談があり、11件の申請を受け付けたということです。
実家の解体の申請に訪れた市内に住む60代の男性は、「震災当初からなかなか復旧・復興が進んでいない実感がある。公費解体の手続きをどれほど早く進められるかは行政や業者との相談になるが、なるべくスピード感を持ってやってほしい」と話していました。
自費で解体を開始した被災者も
公費解体の開始を待ちきれず、自分の費用で解体を開始した被災者もいます。
輪島市河井町の重蔵神社は地震で拝殿と社務所、それに6つの社がいずれも全壊となりました。
当初は公費解体を検討していましたが、知人が「年内にできるかわからない」と市の担当者から伝えられたと聞き、自費での解体に取りかかりました。
重機を扱えるボランティアの協力も得てこれまでに2つの社を解体したということで、解体した場所には今後、拝殿に取り残された神具を保管する倉庫を建てることにしています。
重蔵神社の能門伊都子さんは「解体にこんなに時間がかかるとは全く思っていなかったし、解体が進まないことで心配事がさらに増えている。早く解体して前に進みたい」と話しています。
輪島市 ”経験がない職員が対応も原因の一つ”
「公費解体」を進める上での課題は何か。
自治体や解体の委託業者などによりますと、土地や建物の所有者の特定や自治体での事務作業など、手続きに時間がかかることや、解体業者の不足、災害廃棄物の置き場の不足などだということです。
輪島市環境対策課の友延和義課長は「公費解体の制度を適用するような災害は毎年起こるものではなく、経験がない職員が対応していることも原因の一つだ。公費解体に着手し始めたばかりで進んでいない現状ではあるが、国や県などと連携しこれから加速度的に進めていきたい」と話していました。