阪神・淡路被災地、震災石綿禍の発症本格化か 阪神間の男性、労災認定6人目 潜伏30年超、被害拡大の恐れ(2024年7月22日『神戸新聞』)

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阪神・淡路大震災で被災後、重機で解体されるビル。粉じんが舞う=1995年2月、神戸市兵庫区
 1995年1月の阪神・淡路大震災の直後、瓦礫(がれき)撤去などの業務に携わった阪神間在住の男性(67)が、当時吸ったアスベスト石綿)が原因で悪性胸膜中皮腫を発症したとして、神戸西労働基準監督署が労災認定していたことが21日、分かった。阪神・淡路の建物解体や復旧作業に携わった人で、労災や公務災害に認定された人は6人目。中皮腫の発症には石綿を吸い込んでから平均30~40年かかるとされ、被災地でこれから発症が本格化する恐れがある。専門家らは公的な対策の充実を訴える。
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 男性は尼崎市出身。自宅周辺は住宅街で、石綿を扱う工場はなかった。道路建設会社に就職し施行管理などを担ったが、業務で石綿の使用はなかったという。
 神戸営業所長だった時に震災が発生し、直後は道路の瓦礫の撤去や運搬を請け負った。自らも現場に出向き、数カ月後から本格化した解体作業でも責任者として現場で指示を出した。
 特に倉庫内で壁材などを壊す際は粉じんが充満した。石綿が吹き付けられた建物があることも知っていたが、マスクをしないこともあった。男性は「体に良くないとは思っていたが、命の危険まであるとは当時知らなかった」と振り返る。
 約27年後の2022年4月、喉の違和感や声のかすれがあり病院を受診。精密検査で「右悪性胸膜中皮腫」と診断された。同年9月に兵庫医科大で胸膜を切除する手術を受け、現在は経過観察が続く。息が切れやすく、階段も休みながらでないと上れないという。
 労災認定は23年10月付。神戸西労基署は、95年2月以降、瓦礫撤去や解体作業で石綿に暴露したことが発症につながったとした。男性は「震災時の石綿が原因としか考えられなかった。被災地で同じように活動した人は多く、患者はもっといるのでは」と話す。
 今年1月の能登半島地震でも民家やビルが倒壊。男性は「解体が進む中で、また同じことが繰り返されないか」と懸念する。ひょうご労働安全衛生センター(神戸市中央区)の西山和宏事務局長は「行政は災害時の石綿問題に真剣に向き合ってほしい」としている。(竜門和諒)
アスベスト石綿)】繊維状の鉱物の総称で耐熱性や断熱性など幅広い機能がある。戦前から国策として使用された。吸引すれば長い潜伏期間を経て中皮腫や肺がんなどのリスクがある。2005年、尼崎市クボタ旧神崎工場内外で被害が発覚したクボタショックが転機となり翌06年、製品の使用や輸入、販売などが禁止となった。