安倍首相へのヤジ排除訴訟、女性の表現の自由侵害と男性への警官の制止の正当性認める判決が確定(2024年8月20日『読売新聞』)

 2019年参院選で、街頭演説する安倍首相(当時)にヤジを飛ばした際に北海道警の警察官に不当に排除されたとして、男女2人が道に計660万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は19日付の決定で原告の男性側と道側の上告を退けた。憲法が保障する表現の自由を侵害したとして女性に55万円を支払うよう道に命じる一方、男性を逆転敗訴とした2審・札幌高裁判決が確定した。
 2審判決によると、2人は19年7月15日、JR札幌駅前での安倍元首相の演説中、「安倍辞めろ」「増税反対」などと叫んだところ、警察官に取り囲まれ、数十メートル移動させられるなどした。
 道側は訴訟で、人の生命や身体に危険が及ぶ恐れがある場合に市民を制止できるとする「警察官職務執行法」に基づく正当な対応だったと主張したが、22年3月の1審・札幌地裁判決は2人の行為は「犯罪を扇動するものではなかった」と指摘。表現の自由が侵害されたと認定し、男性に33万円、女性に55万円を賠償するよう道に命じた。
 一方、昨年6月の高裁判決は女性への賠償命令は支持したが、男性については「物を投げるなどの危険性が切迫していた」と敗訴としたため、男性側と道側が上告していた。