「同じ人間として扱われず」 原告訴え、強制不妊訴訟で弁論 「除斥」焦点、統一判断へ・最高裁(2024年5月29日『時事通信』)

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優生保護法に基づく強制不妊手術を巡る国家賠償訴訟の上告審弁論のため、最高裁に向かう原告と弁護団ら=29日午前、東京都千代田区
 旧優生保護法に基づき、障害などを理由に不妊手術を強制されたとして、全国の男女が国に損害賠償を求めた5件の訴訟の上告審弁論が29日、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)で開かれた。
【ひと目でわかる】強制不妊訴訟 二審の判断
 原告らが意見陳述し、神戸地裁に提訴した鈴木由美さんは「同じ人間として扱ってもらえなかった」と訴えた。
 国策による差別と人権侵害について、不法行為から20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」の適用が認められるかが焦点。最高裁は今夏にも統一判断を示す見通しだ。
 弁論で、鈴木さんは「大きくなったら好きな人と(の間に)子どもが欲しいと思っていた」と無念さを口にした。札幌市の原告、小島喜久夫さん(82)は「自分で自分の人生を決めたかった。それができず悔しい」と涙声で語った。
 全国で最初に被害を訴え、宮城県の原告でもある飯塚淳子さん(仮名)は「被害者は高齢化し、亡くなってしまう方もいる。早く全ての被害者が救われる判決を出して」と求めた。
 14歳の時に手術を強いられた東京の北三郎さん(仮名、81)は「人生を大きく狂わされた。67年苦しみ続けてきた」と振り返り、大阪の原告で、聴覚障害のある野村花子さん(仮名)は手話で「優生保護法は障害者差別。子育てできる幸せな生活をしたい」と強調した。
 原告側の代理人弁護士は、不妊手術と知らされなかったり、社会的な差別や偏見が残ったりしている状況下で訴えられなかった被害者が多くいると説明した。
 国側は、除斥期間を適用して賠償請求を退けるよう求めた。被害者に一時金を支給する法律が成立し、問題解決を図っているとも述べた。 
 

被害者「国の免責許されず」 旧優生保護法訴訟 最高裁で弁論(2024年5月29日『毎日新聞』)
 
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優生保護法訴訟の上告審弁論のため、最高裁に向かう原告の被害者や弁護団=東京都千代田区で2024年5月29日午前9時2分、巽賢司撮影
 旧優生保護法(1948~96年)下で不妊手術を強制されたとして被害者らが国に損害賠償を求めた5件の訴訟の上告審で、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は29日、原告側と国側双方の意見を聞く弁論を開いた。国側は不法行為から20年が経過しているとして「賠償請求権は消滅している」と主張。原告の被害者側は「国の免責は許されない」と反論して結審した。
 大法廷は今夏にも、旧法の違憲性や、国の賠償責任の有無について統一判断を示す見通し。判決期日は後日指定される。
 上告審で審理の対象になっているのは、札幌、仙台、東京、大阪(2件)の各高裁で出た5件の判決。いずれも旧法が憲法に反していたと認めた。
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 ただ、仙台高裁判決は、手術から提訴まで20年以上が経過しているとし、不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」を適用して国の責任を否定。残りの4件は適用を制限して国に賠償を命じ、判断は分かれている。
 国側は弁論で、除斥期間は被害者の認識を問わずに損害賠償請求権の存続期間を画一的に定めたものだと指摘した。適用制限が認められるのは、加害者の不法行為によって被害者が賠償請求できなくなったような極めて例外的な場合に限られるが、今回はそうした事情がないと主張した。
 一方の被害者側は、国が旧法により障害者らを「不良な子孫を残す」との烙印(らくいん)を押したとし、根強い社会的な差別や偏見の中で提訴は到底できなかったと言及。国が免責されるなら人権侵害の繰り返しに他ならないと訴えた。
 16歳の時に手術を受け、仙台高裁で敗訴した飯塚淳子さん(70代・活動名)は「幸せな結婚や子どもというささやかな夢を全て奪われ、人生は狂わされた。最高裁が最後の希望です」と意見陳述した。
 法廷には多くの障害者が傍聴に訪れた。被害者側の事前の要望に基づいて、被害者側が手配した手話通訳者が法廷内に配置されたほか、大型モニター計6台に被害者側と国側の主張内容が映された。【巽賢司】
 

整理券交付で手話通訳 法廷内は手配せず、批判も―最高裁の障害者配慮・強制不妊訴訟(2024年5月29日『時事通信』)
 
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最高裁の建物内に掲示された障害者向けの案内表示=28日午後、東京都千代田区
 
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最高裁の建物内に掲示された障害者向けの案内表示=28日午後、東京都千代田区
 旧優生保護法に基づく強制不妊手術を巡る国家賠償訴訟の上告審弁論で、最高裁は整理券交付の際に初めて手話通訳を手配し、費用も負担するなど障害者向けに異例の配慮措置を取った。誰もが司法に参加できるような合理的配慮とは何か。判決とは別に、社会的な議論が求められそうだ。
最高裁、障害者に配慮措置 スロープ設置、手話通訳補助も―29日強制不妊訴訟弁論で
 同訴訟では、原告や支援者に車椅子利用者や視覚、聴覚に障害などがある人も少なくない中、最高裁は原告側代理人らと交渉を重ねてきた。
 法廷外の整理券交付や所持品検査で、手話通訳者2人を配置。車椅子利用者や代理人のため、臨時の控室も用意した。また、訴訟概要をホームページ上でふりがな付きで作成したほか、点字版も用意した。
 さらに、新たに傾斜角の緩いスロープを大法廷に上がる階段に設置したり、法廷内に用意したモニター6台に訴訟資料や文字起こしした陳述内容を映したりすることを決定。盲導犬の同伴も認め、計12人分の車椅子スペースも確保した。
 ただ、原告側が求めていた廷内の手話通訳者や文字起こしする人の手配や費用負担は受け入れられず、自ら行うことになった。最高裁は「公費負担は難しく、当事者が負担するものと理解している」と説明した。
 「優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会」(優生連)は「自己責任で用意しろということと同じだ」「非常に差別的だ」と最高裁の姿勢を批判している。
 当事者には知的障害者もいるため、原告側は判決文を分かりやすい内容にすることなども求めている。