「群疑に因りて独見を阻むことなかれ」…(2024年9月20日『毎日新聞』-「余録」)

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95歳で亡くなった園部逸夫さん。昨年10月に毎日新聞のインタビューに応じた=東京都内で2023年10月、山田奈緒撮影
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皇室典範に関する有識者会議小泉純一郎首相(右)に最終報告書を提出する吉川弘之座長=首相官邸で2005年11月24日、川田雅浩撮影
 「群疑(ぐんぎ)に因(よ)りて独見(どくけん)を阻(はば)むことなかれ」。明代の書物「菜根譚(さいこんたん)」の一文を自著の冒頭に掲げた。多数が疑っても正しい意見は曲げないという人生訓。「不協和音のすすめ」と題したエッセーも書いた
▲95歳で亡くなった園部逸夫(そのべ・いつお)さん。行政法の権威で京都大での学究生活から司法試験を受けずに判事に転身した希少な存在。いったんアカデミズムの世界に戻った後に最高裁判事を10年務めた
「タテ社会をヨコに生きて」はオーラルヒストリー本のサブタイトル。大学と裁判所を往復した異例の経歴が迎合しない姿勢につながったのだろう。ロッキード事件玉串料訴訟、裁判官懲戒事件。関わった判決の多くで独自に意見を付け加えた
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▲祖父も父も法律家でソウルで生まれ、父と共に台湾に移った。終戦の年、旧制台北高校への入学が決まった直後に16歳で警備召集され、米軍上陸に備えて坑道を掘らされたという。その後、旧制四高に進み、晩年に日本寮歌振興会の会長を務めた
▲退官後も豊富な法知識や経験を頼られた。小泉純一郎首相時代には「皇室典範に関する有識者会議」で座長代理を務め、女性・女系天皇を容認する報告書をまとめた
▲「面倒な反発を恐れて政治家は皇室の課題を脇に置く。憲法学者は触らぬ神にたたりなしで矛盾を素通りする。国民も関心を寄せない。このままでは皇室の縮小が続きます」。小紙のインタビューに答えている。与野党の党首選候補は皇室制度研究で知られた法律家の「遺言」をどう聞くだろうか。