カリフォルニアを拠点とする第3海兵航空団に所属する機体で、訓練中にエンジンから火災が発生した。
基地内の消防によって火は消し止められ大事にならずに済んだが、出火の原因は分かっていない。事故前に故障などの兆候も見られなかったとしている。
相次ぐ事故に安全性の懸念が消えない。
屋久島沖の墜落事故を巡り公表された米軍の調査報告書は、根本的な原因の特定には至らないという内容だった。ギアにひびが入ったが、その理由は分からないというのだ。
にもかかわらず政府は安全対策を講じれば事故を予防できる、米軍も安全に運用できる確信があるとした。
原因不明のまま「安全だ」と言われても、納得できるわけがない。
今回のエンジン出火に関しては、飛行停止などの予定はないという。
オスプレイで相次ぐ事故は、前の事故の再発防止策が講じられた後に、別の原因で起きている。
その事実を軽視しているのではないか。
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「構造的欠陥」が指摘される米軍機が、日常的に頭上を飛び交う恐怖を想像してもらいたい。
「事故の情報を聞くたびに不安が募る」「エンジン出火からさらに大きな事故につながる可能性がある」という基地周辺住民や県幹部の声は、決して大げさなものではない。
今回の事故について、県民の安全を重視するのなら、政府はきちんとした調査と原因究明を米側に迫るべきだ。
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世界一危険といわれる普天間飛行場の返還は、県政の最重要課題である。
普天間飛行場が返還されるのは最短でも12年後、その間、危険性の除去をどのように進めていくのか-。県民が最も聞きたかったことだが、一人として切り込まなかったのだ。
沖縄の安全が脅かされるのを見て見ぬふりをして日本の安全保障が成り立っているとしたら、政治の責任放棄というほかない。
オスプレイ 事故の原因を取り除けたのか(2024年8月18日『読売新聞』-「社説」)
墜落事故の原因を究明し、危険性を取り除かなければ、基地周辺の住民は安心できまい。政府は米国に安全対策の徹底を求め続けるべきだ。
報告書によると、事故機は飛行中、エンジンの動力を左翼のローターに伝える変速装置が故障し、バランスを失ったという。
変速装置の内部では、歯車が高速回転しており、部品がすり減って不具合が生じることがあるという。このためオスプレイには、変速装置の異常を感知し、警告する仕組みが導入されている。
事故機では、変速装置の不具合を示す警告灯が5回表示された。操縦マニュアルは、警告灯が3回点灯した段階で、近辺に着陸することを定めている。報告書は「操縦士のリスク管理が不十分」だったことも原因だと指摘した。
操縦士の安全意識の低さには驚きを禁じ得ないが、そもそも、変速装置に異常が発生する事態を防ぐことが重要なはずだ。
米軍は現在、オスプレイを横田基地と普天間飛行場で計約30機運用している。日本も米国から17機を輸入し、木更津駐屯地に配備している。将来は離島防衛で活用するため、佐賀空港近くに開設する駐屯地で運用する予定だ。
木原防衛相は記者会見で「形あるものは必ず壊れる。何もオスプレイに限らない」と述べた。
オスプレイは米国や豪州でも墜落事故を起こしており、安全性を疑う声は多い。100%の安全はないという一般論で、事故が不可抗力であるかのように述べる防衛相の姿勢は無責任すぎる。
ヘリコプターと固定翼機の機能を併せ持つオスプレイは、高速で長距離を飛行できるのが特徴だ。垂直での離着陸も可能なため、滑走路がなくても運用できる。
事故が起きる可能性を低減することが、活用の範囲を広げる前提となるだろう。