詳しい事故原因はいまだに説明されておらず、住民の不安は増すばかりだ。
在日米軍と
陸上自衛隊が、輸送機
オスプレイの飛行を再開してから約1カ月がたった。
米軍は、昨年11月の鹿児島県・
屋久島沖での墜落事故を受け、世界各地で飛行を停止していたが、先月、約3カ月ぶりに解除した。
防衛省による関係
自治体への説明を経て、日本国内でも飛行が再開された。
米軍のサルベージ船に引き揚げられた
オスプレイの機体主要部と見られる物体=鹿児島県・
屋久島沖で2023年12月27日午後3時34分、本社ヘリから上入来尚撮影
整備や手順を変更することで安全に運用できるという。だが、事故原因を「特定部品の不具合」とするだけで、部品の名称も不具合の内容も、米国内法上の制限を理由に明らかにしていない。
現在、国内には計40機以上の
オスプレイが配備され、その6割近くは沖縄に集中している。
安全軽視の再開に、県民からは「納得できない」と憤りの声が上がっている。米軍
普天間飛行場がある
宜野湾市の松川正則市長は、
首相官邸を訪れ、事故原因の丁寧な説明を求めた。
3月末には、
沖縄県議会が再開に抗議し、配備撤回を求める決議を全会一致で可決した。地元への説明が「極めて不十分」と指摘し、政府と米軍の姿勢について「基地の運用を優先し、説明責任を果たさず、県民の命と安全をないがしろにする」と批判している。いずれも当然の反応だ。
オスプレイは世界各地で繰り返し墜落事故を起こしている。この2年間だけでも4件に上る。
政府は米軍に対し、情報公開を積極的に働きかける責任がある。
事故が起きるたび、米軍に特別な権利を認めた
日米地位協定が障壁となり、日本側が調査できないことが問題となってきた。現場の捜索や事故機の差し押さえ、検証などができるよう、
地位協定を抜本的に改定すべきだ。
先の日米首脳会談では、両国を「グローバルパートナー」と位置づけ、共同声明で「同盟は前例のない高みに到達した」とうたった。一方で、
オスプレイの事故や
地位協定改定などの問題について言及はなかった。
米国に追随しているだけでは、同盟関係は安定しない。政府は住民の不安を払拭(ふっしょく)するとともに、沖縄の基地負担軽減に向けさらに努力する必要がある。