オスプレイ墜落報告書 構造的欠陥は明らかだ(2024年8月3日『琉球新報』-「社説」)

 オスプレイの構造的欠陥は明らかだ。飛行経路周辺で暮らす住民や乗員の生命を守るためにも欠陥機の撤退、退役しかない。
 鹿児島県の屋久島沖で昨年11月、垂直離着陸輸送機CV22オスプレイが墜落し、乗員8人全員が死亡した事故で、米空軍は事故調査報告書を公表した。
 機体左側にある変速機「プロップローター・ギアボックス」の内部で歯車が破断し、その破片で別の歯車がすり減ってローターに動力が伝わらない状態になったというのが墜落の原因である。
 さらに変速機の不具合を示す警報が数回出ていたにもかかわらず、飛行を続けた操縦士の判断にも問題があったと指摘している。
 ギアボックス内の歯車破断と操縦士の判断ミスという2点を原因とした墜落事故だと報告書は結論付けているが、より深刻な問題は歯車破断だ。過去にもギアボックスの不具合が取り沙汰されてきた。構造的欠陥が指摘されるゆえんである。
 2022年6月に米カリフォルニア州南部で発生し、5人が亡くなったMV22の墜落事故について米海兵隊がまとめた調査報告書は、ギアボックス内にあるクラッチの作動不良による「壊滅的かつ予期せぬ機械的故障」だと結論付けている。MV22は普天間飛行場所属機と同型である。
 今回の墜落事故につながった歯車破断の根本原因も特定できていないことも看過できない。歯車が折れた原因が分からないままでは墜落事故が解明されていないに等しい。同じような墜落事故が起きる可能性が残されているのである。本来ならば飛行が許されてはならないはずだ。
 歯車破断に加えて報告書が指摘する操縦士の判断ミスも極めて重大である。
 事故機は山口県岩国基地を離陸して墜落するまでの間、ギアボックス内で金属片が発生したことを知らせる警報は5回発せられている。決まりでは3回目で速やかに着陸することになっていたが、操縦士は飛行を継続した。最初の警報から墜落までに約50分経過している。この間、緊急着陸できる島があったのに乗員同士で着陸を検討した形跡はなかったという。
 この判断ミスは不可解である。このような警報の無視は民間航空機では考えられず、乗員間に危機意識が欠落していたと言わざるを得ない。隊員教育の不徹底、全軍的なオスプレイ安全対策の不備などが指摘されよう。これも解明されるべき問題である。
 オスプレイの飛行を容認する日本政府の姿勢も疑問だ。林芳正官房長官は2日の会見で「事故原因に対応した各種の安全対策を講じることで、同様の事故を予防することは可能だ」と述べたが、認識が甘すぎる。事故原因の解明や再発防止策に疑問があれば、改めて飛行停止を米側に求めるべきである。