オスプレイに関する社説・コラム(2024年3月29日『日本経済新聞』-「社説」)

 


米軍は南西諸島における対中国抑止にオスプレイを活用している=共同

オスプレイの不安拭う努力を(2024年3月29日『日本経済新聞』-「社説」)

 在日米軍陸上自衛隊が輸送機オスプレイの運用を今月から相次いで再開した。米軍は2023年11月に鹿児島県屋久島沖で乗組員8人全員が死亡する墜落事故をおこし、全機種の飛行を3カ月ほど停止していた。

 米軍は事故の原因を特定し、再発防止策をとったと主張して再開に踏み切った。ただ、その詳細な内容は公表していない。南西諸島の防衛にオスプレイが有効なのは理解できるものの、米軍と自衛隊は地元住民の不安を拭う努力を怠ってはならない。

 在日米軍オスプレイ普天間基地沖縄県)や横田基地(東京都)に30機ほど置き、陸自は14機を木更津駐屯地(千葉県)に暫定配備している。昨年の事故は横田基地に配備されていた米軍の機体によるものだった。

 木原稔防衛相は事故の原因を「特定の部品の不具合」と説明し、米側からは「これまでにないレベルで詳細に報告を受けた」と話した。安全確保を最優先し、再発防止のための安全対策となる教育や整備に取り組むとして飛行再開に理解を求めた。

 不具合の具体的な中身は対外的に公表していない。米側で訴訟や処分の対応も含めた調査が続いており、報告書の公開まで米国内法の制限があるためだという。

 防衛省はこうした内容を在日米軍陸自の基地がある地方自治体に伝えた。沖縄県などでは「説明が不十分」として、飛行再開に反発が大きい。事故原因などの中身が伏せられたままでは、こうした反応がでるのはもっともだろう。

 オスプレイは垂直に離着陸したり、水平に飛行したりできるのが特徴だ。政府は南西諸島の離島防衛での活用を想定する。陸自が配備先を木更津から佐賀空港佐賀県)に順次移すのもその一環だ。

 地元住民の信頼は日米同盟の土台をなす。米軍は迅速な情報公開に努め、その不安の払拭に全力を尽くさなければならない。防衛省自衛隊も米側への働きかけを強めてほしい。

オスプレイ抗議決議 政府は全会一致直視せよ(2024年3月29日『琉球新報』-「社説」)

 県議会がオスプレイの飛行再開に抗議し、配備撤回を求める決議を全会一致で可決した。屋久島沖での墜落事故を受けて飛行停止となったオスプレイの飛行再開に抗議し撤回を求めるのは当然だ。

 県議会がオスプレイの配備撤回や撤収を全会一致で求めるのは、2013年7月11日のオスプレイ追加配備抗議決議と意見書以来、11年ぶりだ。政府は全会一致の重い意味を直視し、県民の総意に真摯(しんし)に向き合うべきだ。
 昨年11月29日、米軍横田基地所属の垂直離着陸輸送機CV22オスプレイが鹿児島県・屋久島沖に墜落し、乗員8人が死亡した。嘉手納基地に向かう途中で起きた事故で、一歩間違えば沖縄の民間地が巻き込まれる恐れもあった。
 意見書は事故原因の詳細や飛行再開に関する防衛省の地元説明は「極めて不十分」と指摘している。その上で「基地の運用を優先し、説明責任を果たさず、県民の命と安全をないがしろにする政府と米軍の姿勢に、地元自治体をはじめ多くの県民が強い憤りを感じている」と厳しく批判した。
 今回の事故で米国防総省は全世界でオスプレイの飛行を停止したが、説明を尽くさないまま飛行を再開させた。県議会の11年ぶりの全会一致による意見書可決の背景には、12年10月の米軍普天間飛行場配備後、国内外で事故が起きているにもかかわらず、抜本的な対策を講じないまま運用を続ける日米両政府への不信感がある。
 意見書は日米地位協定を抜本的に改定し、日本政府が米軍機事故などの際に調査権限を行使できるよう求めている。事故原因をひた隠しにしたままにする日米両政府に突き付けたまっとうな指摘だ。
 約3カ月の運用停止は異例で、米側が深刻な事故だと認識していたことがうかがえる。飛行中のトラブルは米兵のみならず、配備された地域や飛行ルートの近くで活動する住民らの安全に関わる。オスプレイを日本国内から撤収させることが最適な安全策のはずだが、日本政府はまたしても米側の説明をうのみにし、運用再開に合意した。
 防衛省は運用再開に当たって県内の自治体に出向いたが、事故原因は明らかにせず、一方的に再開を通告しただけだった。もはや米軍の御用聞きである。「米側から前例のないレベルで極めて詳細な情報提供を受けている」なら、原因を開示し理解を得られるまで飛行再開を拒むべきだった。
 県議会の指摘の通り、政府は独自に事故原因と安全対策を厳しく精査すべきだ。それができなければ飛行は認められない。今からでも米本国への撤収を米軍に迫るべきだ。
 強固な日米同盟をうたいながら米側に意見することもせず、国民の生命と財産を軽視するかのような対応が政府への信頼を損なわせていることにいいかげん気づくべきだ。県民の要求はオスプレイの沖縄からの撤収である。

 

オスプレイの飛行再開に抗議し配備の撤回を求める抗議決議 

先般米軍は、昨年11月に鹿児島県屋久島沖で発生し8名が死亡したCV22オスプレイの墜落事故を受けて全世界で飛行を停止していたオスプレイの運用再開方針を発表した。 
防衛省は、米側から前例のないレベルで詳細な情報提供を受けており、合理的と評価しているとしてこれを是認し、去る3月14日午前、米軍普天間飛行場に配備されているオスプレイが飛行を再開した。 
一方、防衛省による県や宜野湾市嘉手納町に対する、事故原因の詳細や飛行再開の定義などの説明は極めて不十分であり、県民の不安を払拭するものになっていない。このような基地の運用を優先し、説明責任を果たさず、県民の命と安全をないがしろにする政府と米軍の姿勢に、地元自治体をはじめ多くの県民が強い憤りを感じている。 
米側は昨年の墜落事故について、特定の部品の不具合が原因と説明しているが、部品の名称や不具合の詳細は明らかにしておらず、飛行再開を認めた政府の姿勢は、主権国家としての主体性を著しく欠くものと言わざるを得ない。 
オスプレイについては開発段階や運用後も墜落等の事故が相次ぎ、多数の犠牲者を出していることから、県内41市町村議会の全てにおいて抗議決議を可決するなど、オスプレイ配備反対の民意を示し続けてきた。 
それにもかかわらず、県内には米軍普天間飛行場海兵隊のMV22オスプレイが24機配備されているほか、米軍嘉手納飛行場でも外来機である海軍のCMV22オスプレイが駐機を続けている。 
よって、本県議会は、県民の生命・財産を守る立場から、下記の事項が速やかに実現されるよう強く要求する。 
記 
1 事故が絶えないオスプレイの飛行再開に反対し配備を撤回すること。 
普天間飛行場の一日も早い返還を実現すること。 
日米地位協定を抜本的に改定し、政府において米軍機事故等に対する調査権限を行使できるようにすること。 
上記のとおり決議する。 
令和6年3月28日 
駐 日 米 国 大 使  
在 日 米 軍 司 令 官                                    
在日米軍沖縄地域調整官   宛て 
第3海兵遠征軍司令官  
在 沖 米 国 総 領 事  


沖 縄 県 議 会