検察への告発から4年3カ月…尹大統領夫人を非公開で事情聴取(2024年7月22日『ハンギョレ新聞』)

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尹錫悦大統領夫人のキム・ゴンヒ女史
 韓国検察が錫悦(ユン・ソクヨル)大統領夫人のキム・ゴンヒ女史を検察庁ではなく第三の場所で、約12時間にわたって非公開で事情聴取した。ドイツモーターズ株価操作事件が検察に告発されてから約4年3カ月で実現したもの。ソウル中央地検は、この事件の捜査指揮権がないことを理由にイ・ウォンソク検察総長へのキム女史聴取の報告を事後に行なったことから、「検察総長抜かし」だとして波紋を広げている。
 ソウル中央地検の反腐敗捜査2部(チェ・ジェフン部長)と刑事1部(キム・スンホ部長)は21日、それぞれキム女史をドイツモーターズ株価操作事件とブランドバッグ受け取り疑惑事件について聴取したと明らかにした。
 ハンギョレが取材したところ、キム女史の聴取は今月20日午後1時30分から翌日午前1時20分まで行われた。午後6時30分までは株価操作、午後8時からブランドバッグ受け取り事件の聴取が行われた。
 聴取場所はソウル中央地検の庁舎ではなく第三の場所。検察によると「政府保安庁舎」だという。「非公開出張聴取」ということだ。ソウル中央地検の関係者は、「公開呼出しに応じてくれればよいが、大統領警護法上、警護対象であるため(調整が避けられなかった)」とし、「大統領室関連の付属施設で聴取すればキム女史の自宅に行って取り調べることになるのでできない。検察もキム女史もいずれも移動しなければならない場所に決めた」と述べた。
 ソウル中央地検のイ・チャンス地検長は、イ総長の捜査指揮権が排除された株価操作事件の聴取が終わり、ブランドバッグ受け取り事件の聴取が半分ほど進んだ20日午後11時20分ごろに、総長にキム女史から事情を聴いている最中であることを報告した。最高検察庁の関係者は21日、ハンギョレに「聴取が終わりつつある時点でソウル中央地検は最高検察庁に事後通知してきており、検察総長はこのような状況に対して深く苦心している」と語った。イ総長は、キム女史を検察庁に呼んで聴取するべきだという原則を数度にわたって公に表明してきた。
 キム女史がドイツモーターズの株価操作をめぐって資本市場法違反の疑いで告発されたのは、約4年3カ月前の2020年4月。ブランドバッグ受け取り事件の捜査は、昨年12月にインターネットメディア「ソウルの声」がキム女史と尹大統領を請託禁止法違反と収賄で告発したことから始まった。キム女史側のチェ・ジウ弁護士は記者団に、ショートメッセージで「誠実に取り調べに臨み、事実をありのままに供述したことをお知らせする」と述べている。
チョン・ヘミン、ペ・ジヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

尹大統領夫人「ブランドバッグは返そうとした」…「国庫から横領」指示したことに?(2024年7月17日『ハンギョレ新聞』)
 
キム・ゴンヒ女史側「返還するため再び包装」 
大統領室「大統領への贈り物だから国庫に帰属」
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尹錫悦大統領夫人のキム・ゴンヒ女史=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社
 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領夫人のキム・ゴンヒ女史がチェ・ジェヨン牧師からブランドバッグを受け取った当日、返すよう指示したという弁護人側の発表によって、このバッグが「大統領記録物」だという大統領室の当初の釈明は意味をなさなくなった。キム女史側の遅れた釈明によって大統領室の主張との齟齬が生じている。
 キム女史の弁護人は16日、報道資料を発表し、キム女史が2022年9月13日にチェ牧師からバッグを受け取った後、大統領室のY行政官に「『すぐに返したら気分を悪くするかもしれないから、後で返してくれ』と指示した」と明らかにした。Y行政官がうっかり忘れ、バッグをチェ牧師に返さなかったということだ。
 さらに弁護人は「包装を開けたものの、返還するためにまた包装して持っている」とし、「使う意思がなく、返還の意思があったことを裏付けるもの」だと付け加えた。Y行政官は3日、検察の取り調べでこのような趣旨で陳述した。
■新しい主張どおりなら、バッグは贈り物でも大統領記録物でもない
 キム女史の弁護人側のこのような主張は、大統領室の当初の釈明と食い違う。1月19日、大統領室は「大統領夫妻への贈り物は大統領個人が受け取るのではなく、関連規定により国家に帰属し管理される」と述べた。3日後の1月22日、当時与党「国民の力」の人材迎え入れ委員長だったイ・チョルギュ議員は、「(ブランドバッグは)国庫に帰属されたが、これを返還するのは国庫からの横領だ。誰も返還できない」と主張したりもした。イ議員の発言どおりなら、「バッグを返すように」というキム女史の指示は国庫からの横領を指示したことになる。
「ソウルの声」は昨年11月、ユーチューブチャンネルを通じて、チェ・ジェヨン牧師がキム・ゴンヒ女史に高価なブランドバッグをプレゼントしたという内容の疑惑を報じた=「ソウルの声」ユーチューブチャンネル画面よりキャプチャー//ハンギョレ新聞社
 「受け取るのが適切でないと思い、返すよう指示した」というキム女史側の主張どおりなら、バッグは大統領への贈り物ではないため、大統領記録物でもない。この場合、尹錫悦大統領にはキム女史がバッグを受け取ったという事実を認識してから「直ちに」返還しなければならない義務がある。不正請託および金品など授受の禁止に関する法律は「(公職者は)自身の配偶者が授受禁止金品などを受け取った事実を知った場合、これを提供者にすみやかに返還するか、返還するよう処置しなければならない」と定めている。
 キム女史と尹大統領は少なくとも昨年11月、「ソウルの声」が関連報道をした当時、ブランドバッグが返還されていない事実を把握したはずだ。「返すように言ったが行政官がうっかりした」という主張が事実ならば、当時ブランドバッグを「提供者にすみやかに返還」しなければならなかった。
■大統領夫人の指示を忘れるほど大統領室の綱紀が乱れている?
 野党は一斉に批判に乗り出した。「共に民主党」のパク・チャンデ院内代表はこの日、党院内対策会議で「あきれて言葉が出ないほど荒唐無稽な主張だ。誰が見てもトカゲのしっぽ切りに過ぎない試み」だと述べた。さらに「この陳述が事実ならば、大統領夫人の指示事項をうっかり忘れるほど大統領室の綱紀が乱れているという意味であり、大統領室がこれまで出した釈明はすべて偽りだったという意味」だと指摘した。
 「祖国革新党」所属で元検事のパク・ウンジョン議員はこの日、「文化放送MBC)」のラジオ番組のインタビューで、「最初にチェ・ジェヨン牧師が問題を提起した時は『返還を指示した』という話はなかったのに、今になって検察の取り調べを受ける過程でその話を持ち出した」とし、「作られた陳述とみられる可能性が非常に高い」と述べた。このような批判に対し、キム女史の弁護人は「この事件は刑事処罰の規定がない事件で、誰かに責任を転嫁することはできない」とし、「トカゲのしっぽ切りという言葉はつじつまが合わない」と反論した。また「今になって偽りの釈明をする理由もない」と付け加えた。
チョン・ファンボン、オム・ジウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-07-16 22:11