党首第一声から「党略」を可視化 投票は「与党が合格点」かどうか 候補者の属性にも注目(2024年10月20日『産経新聞』)

 

与党のWCで大きく現れたのが「対策」。公明党石井啓一代表が物価高や災害への備えに言及した際、繰り返しこの言葉を使ったことが反映している。石破茂首相(自民党総裁)も災害対策に触れたが、第一声を行った福島県いわき市の漁業支援に触れつつ、能登半島を含めた「復興」に取り組む姿勢を強くにじませた。

野党のWCからは、各党首が自民党の派閥パーティー収入不記載事件を強調したことが分かる。中でも立憲民主党野田佳彦代表は、事件の責任を問われて非公認となった無所属の前職、萩生田光一元自民政調会長の選挙区(東京24区)で第一声。内容はほとんど「裏金」批判だった。

日本維新の会馬場伸幸代表の「お金」は事件への言及に加え、教育無償化などの訴えでも使用した。お金の重みに対する意識の違い、維新の「身を切る改革」姿勢を見せたい思惑がのぞく。

「賃上げ」が目立つ共産党の田村智子委員長、「手取り」「懐」を繰り返した国民民主党玉木雄一郎代表は、事件に触れつつ所得アップを前面に。田村氏は労働「時間」短縮など労働者保護にも言葉を割いた。

沖縄で行った社民党福島瑞穂党首の第一声では「平和」が大きく現れた。れいわ新選組櫛渕万里共同代表は社会保険料引き下げのほか核廃絶などを主張し、「安全保障」の在り方を問う内容。参政党の神谷宗幣代表は積極財政、若者の政治参加などを取り上げた。

投票は「与党が合格点」かどうかで判断

今回の衆院選では多くの争点があり、各党の主張もさまざま。全ての公約を比較することは難しく、違いが分かりづらいことも少なくない。投票にあたって、有権者はどんな点に着目すればいいのだろうか。

「自分の中で大事だと思う争点を2、3個選び、各政党の訴えに自分なりに点数をつけてみるといいのでは」。関西大の坂本治也教授(政治学)はそう助言する。

関西大の坂本治也教授

選択的夫婦別姓や防衛力の在り方など、各党の主張に明確な違いが出やすい争点同士を比べるのも手だ。政策での比較が難しいときは候補者の属性に注目する方法も。年齢や性別、職業が自分と近い候補者ほど、政治に求める「理想」が一致しやすいという。

坂本氏によると、支持政党がない人の場合、党首の印象や候補者の見た目に影響を受けやすい傾向がある。政策を比較して投票することが最良だが、時間も労力もかかる。坂本氏は最も簡単な方法として「与党の業績を見ること」を挙げる。

今回の選挙であれば、自分の中で自公連立政権が「合格点」に達しているといえるかどうかを判断基準にする。「達していないと思うのなら野党に入れるのでもよい。政権が交代しなくても、得票数として表れるので与党にいい緊張感を与えられる」と坂本氏。「世の中に対する不満を解決するのが政治。困りごとがあるのなら、投票に行って政治を変えることが必要だ」と話した。(渡部圭介、小川恵理子)

解析方法

文章解析エンジン「MeCab」(メカブ)を使い、各党の党首の第一声から名詞を抽出し、党名や人名、「選挙」「皆さん」など政策とは関係のない言葉を除外して集計。出現頻度が高かった言葉をプログラミング言語Python」(パイソン)のライブラリ「ワードクラウド」などを使って可視化した。