GDPは、その国の経済規模や景気の状況を総合的に示す指標。アジア太平洋研究所(APIR)の稲田義久研究統括が、GDPについては国際通貨基金(IMF)の予測を、為替レートについては米金融サービス大手、S&Pグローバルの想定をもとに計算した。レートは29年までしか出ておらず、名目GDPも同年分まで試算した。
IMFによれば、円ベースの日本の名目GDPは、25年の631兆188億円から毎年成長を続け、29年には700兆3662億円になる見通し。
この見通しに関し、S&P社の示す為替レートに準じ、25年に123・9円(22年並みの水準)、29年に104・9円(21年並みの水準)になると想定。これをもとにドルに換算すると、日本の名目GDPは、25年の5兆930億ドルから、29年は6兆6765億ドルにまで拡大する。25年はともに4兆ドル台とみられるドイツ、インドを上回り、米国、中国に次ぐ3位に。順位は29年まで維持されるとみられる。
日銀による金融正常化や、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが進めば、日米の金利差が縮み、運用がより有利になる円を買ってドルを売る動きが加速して円高ドル安が進む。
APIRの稲田氏は、FRBの利下げに関し、「24年末までに1回行われ、25年にかけては6回程度あると市場はみている」と指摘する。
さらに、米国のトランプ前大統領はドル高是正をうたっており、今年11月の大統領選で返り咲けば、円高ドル安が促される可能性がある。
ただ、円高が進まなければ予測通りとならない。1ドル=140円台が続くと想定するIMFの推計によると、インドの名目GDPは25年に4兆3398億ドルに。23年にドイツに抜かれすでに4位の日本は25年に4兆3103億ドルとなり5位に転落。29年時点でもインド、ドイツを下回ったままだ。
このようにGDPの順位は円高の進み具合に左右されるため、稲田氏は「一喜一憂する必要はない」とする。
とくにインドは人口増と内需拡大を背景にした経済成長が著しい。日本は人口減少が続いているため、稲田氏は、各労働者の生産性を高めるなどして「1人当たりGDPを伸ばすことに注力すべきだ」としている。(井上浩平)