20年ぶりとなる新しい紙幣が3日発行されます。新紙幣は3日の朝以降、日銀から各金融機関に引き渡され、午前中に手にすることができる金融機関もある見込みです。
紙幣のデザインの変更は、今の紙幣が発行された2004年以来、20年ぶりです。
新紙幣 どこで受け取れる?
りそなグループのうち、埼玉りそな銀行は初日から約100店舗の窓口や両替機で、新紙幣の出金や両替が可能だとしていて、早ければ午前中に新紙幣を手にすることができるとしています。
渋沢栄一の出身地が埼玉県深谷市であることから、地域を盛り上げるための対応だとしていますが、各店舗で紙幣の数には限りがあるとしています。
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行は、初日は混乱を避けるため、新紙幣を取り扱う店舗はごく一部にとどめるとしています。
また、ATMについても、みずほ銀行が初日は新紙幣の充てんよりも窓口での対応を優先させることを決めているほか、三菱UFJ銀行と三井住友銀行もATMへの充てんを積極的には行わない方針です。
3行は、4日以降は順次、全店舗で新紙幣の取り扱いを始めるほか、ATMへの充てんも進めるとしています。
また、ATMを全国に2万7000台以上設置しているセブン銀行も、初日は試験的に一部のATMに新紙幣を充てんしますが、当面は旧紙幣の数が多い状態が続きそうだとしています。
《各業界の対応状況》
新紙幣への対応状況は、業界によってばらつきが出ています。
財務省が5月にメーカーの業界団体に行った聞き取り調査では、新紙幣の発行開始までに、大手コンビニ・スーパーのレジは8割から9割程度、鉄道の券売機は8割から9割程度で更新が進むほか、路線バスの料金箱などでは6割から7割程度で更新が完了する見通しです。
一方、コインパーキングなどの自動精算機や、飲食店の食券など券売機は5割程度にとどまるとみられるということです。
JR各社
JR東日本
管内の券売機約4000台について、新紙幣対応のための更新作業などをすべて終えたということです。3日以降、どの券売機でも新紙幣は利用できるとしています。
JR東海
管内の駅にある約700台の券売機、それに乗り越し分を支払う自動精算機は対応を終えたということです。「ICカード」に現金をチャージするための「入金機」の一部では更新作業を続けるということですが、「入金機」が設置された駅には必ず「券売機」があるため、利用者に支障はなく、券売機を使ってICカードに現金をチャージして欲しいと呼びかけています。
JR北海道
券売機を設置している114駅のうち、69駅は対応を終えましたが、19の無人駅はいずれも対応は完了していないということです。また「簡易券売機」も、すべてで対応は完了していないということです。
JR西日本
駅員のいる駅では少なくとも1台は新紙幣に対応できるようにしたとしています。一方、無人駅の券売機については、今年度中に更新作業を進めるとしています。
JR四国
四国4県にある108駅のうち、91駅で対応が完了したということです。残りの駅の対応は未定です。ただ、ワンマン車両内で運賃を払う両替機については、今年度中には対応を終える見通しです。
JR九州
管内の駅にある約600台の券売機の半数ほどで、改修を終えたということです。来年12月ごろまでに、全券売機で対応を完了する予定です。新紙幣が使えない駅では、降車駅で運賃を支払ってもらうなどの対応を促すということです。
バス会社 対応間に合わないケース相次ぐ
熊本県内を走る一部のバスはまだ対応しておらず、今後更新を進めることにしています。
全国の中小のバス会社では費用の負担が重いとして、当面運賃箱などの更新を見送るところもあります。
業界団体によりますと、運賃箱などの入れ替えには1台100万円から200万円ほどの費用がかかるといいます。
バス会社では、乗車の際に旧紙幣を準備しておくことや、キャッシュレスで決済できるICカードに現金をあらかじめチャージしておくよう呼びかけているケースもあります。
そもそもなぜデザインを変更?
今回の紙幣のデザイン変更は偽造防止の強化や、誰でも利用しやすい「ユニバーサルデザイン」の導入が主な目的です。
偽造防止という点では、最先端のホログラム技術を導入しました。
斜めに傾けると画像が立体的に動いて見える仕組みとなっていて、傾け方によって肖像の顔が左右に向きを変えたり、額面の数字の色合いが変化したりします。
国立印刷局によりますと、この技術をお札に採用するのは世界で初めてだということです。また、「すかし」には肖像の背景に緻密な線で構成した模様が施されています。
ユニバーサルデザインという点では、日本の紙幣になじみの薄い外国人なども利用しやすいよう、額面の表記を漢字よりも数字を大きく目立つようにしています。
また、目の不自由な人でも指で触って紙幣の種類が分かるよう、凹凸のある11本の斜線=斜めの線を印刷しています。一万円札は左右の中央、五千円札は上下の中央、千円札は右上と左下にあります。
6月末時点であわせて52億枚を準備
新紙幣の発行に向けて、政府・日銀は約2年前から本格的な印刷を始めるなど、準備を進めてきました。
日銀は6月末時点で一万円札を29億枚、五千円札を3億枚、千円札を20億枚のあわせて52億枚を準備しています。
来年3月までにはさらに22億8000万枚準備し、現在発行されている紙幣の46%にあたる74億8000万枚とする計画です。
日銀によりますと、20年前の前回の新紙幣の発行の際には、1年間で6割程度が新たな紙幣に切り替わったということです。
専門家「紙幣の信用力 保っていくことが必要」
事業者の中で対応が間に合わないケースが相次いでいることについては。
鈴木財務大臣「ニーズに応じて紙幣を供給していくことが重要」
《発行前日 2日の各地の動き》
信用金庫でも準備進む
同信用金庫の溝口珠希さんは「やっとこの日が来たか、という感じです。あすを一番に盛り上げ、地域と一緒に新紙幣の発行を祝いたいです」と話していました。
対応が間に合った飲食店
この店では支払い方法は現金のみで、新紙幣の発行に備えようと3月中旬に券売機の更新を発注していましたが、企業側が多くの依頼を受けていて、注文から3か月あまりたった7月2日、更新が完了しました。
中島正昭代表は「ギリギリでしたが、なんとか間に合って安心しています。昼どきに両替となると大変なこともあるので、迷惑をかけることなく、スピーディーに対応できるようになってよかったです」と話していました。