東京女子医大 入試疑惑の膿出し切れ(2024年6月29日『東京新聞』-「社説」)

 東京女子医科大の推薦入試で、同窓会組織「至誠会」が持つ推薦枠の対象者を選ぶ際、大学や同会への寄付額を考慮した疑いが浮上している。
 事実なら公正な入試を妨げる重大問題だ。文部科学省も同大側に調査報告を求めた。不正を見逃さず、徹底解明するよう求める。
 関係者によると、同大は2019~24年度の推薦入試で、3親等以内の親族に卒業生や在校生がいる受験生を対象に、至誠会が出願資格を審査する推薦枠を設けていた。
 同会に提出する審査依頼書に、受験生の親族が大学や同会に寄付した額、同会活動への参加実績を記載する欄が設けられ、審査の採点結果一覧には寄付額なども記されていた。
 文科省には19年末、至誠会が大学に推薦する受験生を選ぶ過程で寄付金などが考慮されているとの情報提供があった。同省の問い合わせに対し、大学側は書面で全面否定したという。
 同省の大学入試室は当時、具体的証拠がなく調査が難しかったと説明するが、問い合わせ後も寄付金を考慮する推薦は続いていた。
 本紙が入手した資料によると、この推薦枠で24年度までに毎年10人前後が合格していた。
 至誠会への寄付は5万円が0・1ポイント、会合出席は1回当たり0・5ポイントに換算。面接や筆記試験の合計点数に加算された。寄付金で合格を買ったり、買わせたりするような実態を生々しく物語る。
 入試は公平公正に行われなければならない。文科省は02年、私立大への通知で、入試で寄付金を収受することを禁じており、同大の振る舞いはこれに反する。
 同大では、ほかにも不祥事が相次いでいる。
 3月には勤務実態のない職員に至誠会から給与が支払われていたとして、警視庁が一般社団法人法の特別背任容疑で、至誠会会長を兼ねていた岩本絹子同大理事長の自宅などを家宅捜索した。
 さらに、卒業生を同大の教員として採用する際に、同会への寄付や活動状況を評価対象にしていたことも判明した。
 いずれも、人命に関わる大学の医学教育に対する信頼を傷つける不誠実な行為であり、到底見過ごせない。この際、大胆にメスを入れ、大学や同窓会組織にたまった膿(うみ)を出し切るべきである。