東京女子医大、教員人事で同窓会組織への寄付額を考慮…卒業生に「評価に影響」と要求(2024年6月17日『読売新聞』)

文科省が報告求める
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昇格申請者ら向けの文書には、寄付の状況が評価に影響すると記されていた
 東京女子医科大(東京都新宿区)が、医学部卒業生の教員への採用、内部昇格にあたり、同窓会組織「至誠会」への寄付額を考慮していたことがわかった。寄付の実績が「評価に影響する」と通知しており、昨年までの5年間で約40人が申請前後に寄付をしていた。役職を金で買うような仕組みがルール化されていたといえ、文部科学省は同大に対し、内部調査を行って詳細を報告するよう求めている。
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【ひと目でわかる】就職・昇格前の寄付のイメージ
 東京女子医大によると、同大理事会は2018年5月、卒業生が教授や准教授、講師、准講師の役職への就職や昇格を志願する際、至誠会が個々の卒業生に発行する「活動状況報告書」を評価対象とすることを新たに決定した。
 具体的な手続きは翌6月、医学部学務課名で学内に通知され、留意事項には「寄付などの状況を鑑(かんが)み、活動が認められない場合は評価に影響します」と記されていた。
 20年に発行されたある卒業生の報告書では、過去5年間の至誠会への寄付額や同会主催の研修会などへの出席状況が記載されていた。行事出席は1回0・5点、寄付は10万円あたり0・5点とポイントに換算され、総点数で「非常に良い」(9点以上)から「非常に悪い」(1点以下)の5段階で評価が行われていた。
 関係者によると、点数が低い卒業生には、至誠会理事を兼務する大学理事らが「ポイントが足りない」と連絡し、寄付を求めていた。一方、就職や昇格に必要な点数や、評価の各段階の点数は示していなかった。
 読売新聞が内部資料を分析したところ、至誠会には18年6月以降、昨年3月までに少なくとも延べ70人が報告書の発行を申請。同55人が同会に寄付しており、うち41人は申請前後に10万~80万円を入金していた。
 同大は取材に「公益性のある活動をしている至誠会への寄付を社会貢献活動の一つとして積極的に判断してきた」とし、「寄付を強いる行為があったとの報告や通報も確認されていない」と回答した。
 至誠会は昨年4月、代表理事を同大の岩本絹子理事長が兼務するのは不適格だとして、岩本氏を解任。同大は同10月、昇格などに至誠会への寄付金などを考慮する制度を撤廃した。
 
 同大を巡っては、至誠会元職員が勤務実態がないのに不正に給与を得た疑いで、警視庁が今年3月、関係先として大学本部などを一般社団法人法の特別背任容疑で捜索している。
 文部科学省の幹部は、「教員の選考は社会に理解を得られる形で、適正、公正な手続きで行われなければならない」としている。
 ◆至誠会=私立の東京女子医科大医学部の卒業生や学生が加盟する一般社団法人。病院や看護専門学校を運営し、女性研究者への助成事業も行う。今年3月時点の正会員(卒業生)は約4600人。