L字カーブ解消遠く、非正規待遇なお課題 国際女性デー(2024年3月8日『日本経済新聞』)

女性の正規雇用の割合が20代後半ごろから下がる「L字カーブ」の解消が進まない。総務省労働力調査によると、2023年は20代後半の59%から30代以降下がっていき、50代は3割にとどまる。20代後半から30代で労働力率が落ち込む「M字カーブ」はほぼみられなくなってきたが、非正規から正規への流れは途上。女性の働き方を巡る課題はなお多い。

女性の労働力率を年齢層別にグラフにしたときにアルファベットのMのような形にみえるM字カーブに対し、L字カーブは正規雇用の割合が年齢とともに下がっていく状態を指した言葉だ。

日本では収入の少ない非正規で働く人も目立つ。雇用環境の変化が背景にある。男女別に見ても、23年の非正規割合は女性が53%で、男性の22%よりも高い。こうした状況が男女の経済基盤の格差にもつながる。

24年の春季労使交渉春闘)でも、非正規雇用の待遇改善は重要な論点のひとつとなっている。実際にホンダ味の素など大手でも賃上げなど待遇改善を進める方針を示している。こうした動きは非正規で働く女性にとってもプラスに働く。

賃上げを企業の競争力向上につなげるには非正規であってもスキルアップやリスキリングの機会を積極的に提供し、潜在能力を引き出す工夫が求められる。

一方で女性には年収が一定額を超えると手取りが減少する「年収の壁」を意識する人も多い。内閣府男女共同参画会議で計画実行・監視専門調査会会長を務める中央大学山田昌弘教授は「パート勤務者の働く意欲をそぐ要因となる『年収の壁』解消などの根本的な制度の見直しが必要だ」と強調する。

非正規を含め女性の働く環境をさらによくするには何が必要か。企業のダイバーシティ経営を支援するイー・ウーマン(東京・港)の佐々木かをり社長は「経営層や管理職層における女性の割合を増やさない限り、男女間賃金格差も含めた構造的な問題は変わらない」と訴える。

(杉山恵子)