「いじめに終わりはない」された本人が会見、PTSDの苦しさ吐露 報告書公表まで3年、青梅市教委「認識甘く」(2024年6月19日『東京新聞』)

 
 東京都青梅市教育委員会は18日、当時中学生だった2019~20年ごろ、いじめを受けて登校できなくなったとする市内の男性(17)の訴えについて調べた第三者委員会の報告書を公表した。報告書は、生徒たちによる体形をからかうなどの悪口をいじめ行為と認定し「言葉の暴力をきちんと認識することが重要」と求めた。

◆いじめ苦に転校、親に言われて「重大事態」と認識

 記者会見した、橋本雅幸教育長は「生徒同士のコミュニケーションと思い、認識が甘かった」と釈明し、市教委の別の担当者も「もっと早い段階で重大事態と判断すべきだった」と、対応の遅れに反省の弁を述べた。
報告書を公表した橋本教育長(右から2番目)ら、市教委の担当者=18日、青梅市役所で

報告書を公表した橋本教育長(右から2番目)ら、市教委の担当者=18日、青梅市役所で

 報告書によると、男性は中学校に入学した19年から複数の生徒たちから体形のことをからかわれたり、あだ名をつけられたりした。シャープペンシルで背中を刺されることもあった。20年6月ごろから心身と体調の不良で欠席しがちになり、21年4月にいじめを理由に転校した。
 学校側は、20年6月に男性の母親からの報告を受けて事態を把握。関係生徒への聞き取りや指導をしたが改善されなかった。男性の両親が20年12月、学校側に「重大事態として捉えているか」と尋ねた後、市教委は21年6月に重大事態として第三者委を設置した。
 報告書は「被害者の心理的なケアは教員だけでは限界があった」とスクールカウンセラーの介入の必要性なども指摘した。
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◆高校生になった今も通院「自分の口で言わないと伝わらない」

 青梅市教委にいじめ被害を訴えていた男性は18日、調査報告書の公表を受けて両親とともに市内で記者会見した。「過去のいじめを今起きているかのように思い出し、苦しくなる。自分にとって、いじめに終わりはありません」と訴えた。
記者会見でいじめ被害について語る男性=青梅市内で

記者会見でいじめ被害について語る男性=青梅市内で

 当時のことは「いじめを受けているのを多くの人が見ていたはずなのに助けてくれず、知らないふりをされ、伝えれば伝えるほど傷ついた。学校には自分の味方は一人もいないと感じた」と振り返った。
 報告書の作成で、長期間にわたり続いた聞き取りを「いじめの傷と向き合う戦い」と表現。いじめだと認めてもらえない部分もあり「認識のずれに傷ついた」と話した。
 いじめが原因で心的外傷後ストレス障害PTSD)との診断を受けた。高校生になった今も通院を続けている。記者会見を開いたのは、過去の自分と同じようにいじめ被害にあっている誰かの力になりたいと思ったからだと強調。「現在もつらいが、自分の口で直接言わないと伝わらない」と述べた。(昆野夏子)