国賓として英国を公式訪問された天皇、皇后陛下。ロンドンのバッキンガム宮殿で開かれたチャールズ国王夫妻主催の晩餐会では、皇后雅子さまの頭上で輝く皇后の「第二ティアラ」に注目が集まった。そして英国王室のカミラ王妃も、巨大なルビーが輝くティアラでおふたりを迎えた。きらびやかで、見る人の目をくぎづけにする宝飾品には、英王室側の思いが込められていたと、英王室に詳しい多賀幹子さんは振り返る。
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晩餐会に臨んだ皇后雅子さまの顔の上で輝いていたのは、歴代の皇后に受け継がれてきた、菊をモチーフにした皇后の「第二ティアラ」だった。
そして、英国王室のカミラ王妃が着用していた宝冠も、目を見張るものだった。
英国王室に詳しいジャーナリストの多賀幹子さんによると、それは96個のルビーと豪華なダイヤモンドがあしらわれた、「バーミーズ・ルビー・ティアラ」だった。
多賀さんによると、「バーミーズ・ルビー・ティアラ」はエリザベス女王が1970年代に制作させたティアラだ。
目が奪われるような「バーミーズ・ルビー」は、世界で最も美しいルビーの産出地として知られるミャンマー・モゴック産。結婚のお祝いにミャンマー(当時はビルマ)から贈られたものだ。そしてインドの王族から贈られた「ニザーム・ティアラ」から外したダイヤモンドを使い、宝冠が新たにつくられたのだという。
英国王室の紋章である、赤に白の花弁が重なる「チューダー・ローズ」の薔薇の意匠が、ルビーとダイヤモンドで表現されている。
英王室と英国民にとって、宝飾品への愛情は日本とは比較にならないほど深いと、多賀さんは指摘する。
「王室はもちろん、貴族もそれぞれ名称のついたティアラやネックレスなどの宝飾品を所有しており、誰が所有し、どのような歴史的な由来をもつものなのか、といった点が重要視されます」
そして英王室のメンバーがどの場面で、どのティアラやネックレス、ブローチといった宝飾品を身に着けるかが国民の関心事となっている。
カミラ王妃が今回の晩餐会で白いドレスとルビーの宝冠を選んだのは、日本の国旗をイメージしたもので、招待国への敬意だろうと見られているという。
■最高峰のピンクダイヤは雅子さまへの敬意
大通り「ザ・マル」をパレードする馬車で、チャールズ国王と天皇陛下が顔を寄せて親しく話をする様子は、心温まる光景だった。
カミラ王妃はこの歓迎行事でも、特別な宝飾品を身に着けていた。
エリザベス女王は膨大な数のブローチをコレクションしていたが、カミラ王妃もさまざまなブローチを身に着けて、メッセージを伝えることで知られている。
「この歓迎式典でカミラ王妃が身に着けたのが、世界的に有名なウィリアムソンのピンク・ダイヤモンドのブローチです」
と、多賀さんは話す。
「ウィリアムソン・ダイヤモンド・ブローチ」も、カミラ王妃がエリザベス女王から受け継いだコレクションのひとつだ。
中央には、1940年代にエリザベス女王の結婚祝いとして贈られた23カラットのピンク・ダイヤモンドがあしらわれている。原石は54カラットで、タンザニアのウィリアムソン鉱山から産出された、世界的に有名なピンク・ダイヤモンドだ。
「チャールズ国王の胸のポケットチーフは淡いピンク色でしたから、ピンク・ダイヤモンドと合わせたのでしょう。歓迎式典で演奏された曲目も『さくらさくら』でしたから、ピンク・ダイヤモンドを桜に見立て、雅子さまへの親愛の証とみることができるでしょう」(多賀さん)
きらびやかな宝飾品は、多くの人の目を惹きつけるとともに、身に着ける人が込めた思いやメッセージも届けてくれるようだ。
(AERA dot.編集部・永井貴子)