平和サミット 国際的な対露圧力を強めたい(2024年6月18日『読売新聞』-「社説」)
平和サミット参加国の全ての賛同が得られたわけではないが、少なくともウクライナに平和と安全を取り戻すための土台は築けたと言えよう。
会議の開催前は、合意事項をまとめた共同声明の採択が危ぶまれていた。露と関係の深い新興国の協力が得られるかどうか不明だったためだが、結局、83の国・機関が共同声明に賛同した。
この会議で国際社会のできるだけ幅広い支持を取り付けることを目指したウクライナにとっては、一定の成果と言えるだろう。
共同声明はまず、全ての国家の主権と領土一体性の原則を重んじる、と明記し、武力による威嚇や行使の禁止を唱えた。
会議の参加国の多くが、力ずくで他国の領土を奪おうとしている露の蛮行を許さない、というメッセージを発信した意義は大きい。日米欧は関係国と連携し、対露圧力を強化していく必要がある。
ただ、今回の会議は課題も残した。ウクライナが提唱している和平案は10項目に上ったが、このうち露軍の完全撤退や全領土の返還など、意見が割れそうな7項目は共同声明から外された。
旧植民地だった新興国の中には、国際秩序を主導する西側への反発もある。だが、露の侵略を認めれば、これらの国々の安全が脅かされる事態も起こりえる。
岸田首相は会議で「国際社会全体を協調の世界に導いていく」ことが重要だと訴えた。日本は長年、新興国の経済発展を支え、信頼を醸成してきた。そうした実績を生かし、ウクライナを支援する国際世論作りを主導すべきだ。
事実上のウクライナへの降伏要求であり、話にならない。
16日、スイスで開かれた「世界平和サミット」で記者会見するウクライナのゼレンスキー大統領=ロイター
ウクライナが唱える和平案を話し合う「世界平和サミット」の初会合が15、16の両日、スイスで開かれた。十分な成果があったとはいえないが、ロシア軍の占領地からの全面撤退と早期和平の実現に向けた第一歩としたい。
平和サミットには90カ国以上の代表が出席したものの、ロシアは招かれず中国などは参加しなかった。発表した共同声明は幅広い賛同を得るため、食料安全保障の強化など3つの柱に絞らざるをえなかった。直接のロシア非難が盛り込まれなかったのも残念だ。
共同声明には、すべての関係国が参加し、対話をする必要があることも明記した。次回以降の協議には必ずロシアを参加させ、実効性のある和平案の策定につなげなければならない。
ただ、今回の平和サミットでは和平実現に不可欠な国際社会の結束を示せたとはいいがたい。グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国の代表格であるブラジルやインドをはじめ10カ国以上が共同声明への署名に応じなかった。
こうした国の多くは、中ロなど新興国がつくる多国間の協力組織BRICSの加盟国、または加盟希望国だ。BRICSは米欧主導の既存の国際秩序に修正を迫っており、平和サミットでも双方の間の溝が浮き彫りになった。
中国やブラジルなどは、戦況で優位に立つロシアに配慮した仲介案も提示している。力で国境を変更しようとするロシアの暴挙を容認することになりかねず、強い懸念を覚えざるをえない。
ロシア軍を全面撤退に追い込むには国際的に孤立させる必要があり、カギを握るグローバルサウスに対ロシアで結束を促すことが急務だ。日本政府は同じアジア太平洋の新興国の支持を固めるために主導的な役割を果たすべきだ。
「よいニュースと悪いニュースがある」。この文句で始まるジョ…(2024年6月18日『東京新聞』-「筆洗」)
「よいニュースと悪いニュースがある」。この文句で始まるジョークの形式はおなじみだろう
▼「よいニュースと悪いニュースがある」「よい方は何?」「エアバッグはちゃんと作動した」。車をぶつけたか
▼「よいニュースと悪いニュースがある。よいニュースは独裁者が辞めた」「悪い方は?」「誤報だった」。ナンセンスが面白い。こういうジョークはだいたい、よいニュースの「幸」よりも悪いニュースの「不幸」の方が上回り、そこに皮肉や悲しい笑いが生まれる
▼プーチン大統領が示した和平交渉開始の条件はこうだ。ロシアが一方的に併合を宣言した4州からのウクライナ軍の完全撤退に加え、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念すること。これではウクライナに降伏を迫っているにすぎず、交渉のとば口にはおよそなるまい
▼もう一つ軽口を。よいニュースはウクライナ和平のための国際会議「平和サミット」の開催。悪い方はロシアに配慮するインドなどが共同声明に加わらず、国際社会が十分に結束できなかった。中国は出席さえしていない。「よいニュース」が聞きたい。掛け値なしの。