中露首脳会談 蜜月関係が世界の安定脅かす(2024年5月18日『読売新聞』-「社説」)
不毛な侵略戦争を続けて国力を消耗しているロシアが、いかに深く中国に依存しているかを、改めて浮き彫りにした首脳会談だった。
プーチン露大統領と中国の習近平国家主席が北京で会談し、経済や安全保障など幅広い分野で協力を深めることで合意した。プーチン氏の訪中は昨年10月以来で、今月7日に通算5期目の任期に入ってから初の外国訪問だ。
会談後に発表された共同声明で、両首脳は中露関係について「歴史上最良の時期を迎えている」と自賛した。中露が「内政への干渉や、経済、テクノロジー、外交を制限しようとするいかなる試みにも抵抗する」とも記した。
両国の結束を強調することで、ウクライナ侵略や台湾問題で対立する米欧などをけん制したつもりなのだろう。
共同声明にはまた、中露貿易の拡大や、経済取引での双方の通貨利用など、経済面で関係強化を目指す文言が並んだ。
プーチン氏は今回、エネルギー、金融の担当閣僚や主要企業のトップを多数同行させた。制裁に加わっていない中国との貿易を一層拡大して戦時下でも経済を安定させ、同時に戦費を調達するという狙いがあるのではないか。
中国の支援がなければ、ロシアは侵略を継続できなくなりつつある実態を示しているようだ。
一方、習氏も会談で「中露関係の発展は、地域と世界の平和、安定、繁栄に資する」と述べ、両国の関係強化に期待を示した。
米中対立が深刻化する中、習氏としては、ロシアを支えることで、米国に対抗する立場を強化したいと考えているのだろう。
米欧日は中国に対し、ロシアとの関係を見直すことが「責任ある大国」のあるべき姿だと、粘り強く説き続けねばならない。
中露首脳は「ウクライナ危機の政治的解決」が重要だとの認識でも一致した。侵略を仕掛けた張本人が、撤退もせず、侵略の果実を握ろうという「政治的解決」を主張するとは、虫が良すぎる。
中露首脳会談 蜜月関係が世界の安定脅かす(2024年5月18日『読売新聞』-「社説」)
不毛な侵略戦争を続けて国力を消耗しているロシアが、いかに深く中国に依存しているかを、改めて浮き彫りにした首脳会談だった。
プーチン露大統領と中国の習近平国家主席が北京で会談し、経済や安全保障など幅広い分野で協力を深めることで合意した。プーチン氏の訪中は昨年10月以来で、今月7日に通算5期目の任期に入ってから初の外国訪問だ。
会談後に発表された共同声明で、両首脳は中露関係について「歴史上最良の時期を迎えている」と自賛した。中露が「内政への干渉や、経済、テクノロジー、外交を制限しようとするいかなる試みにも抵抗する」とも記した。
両国の結束を強調することで、ウクライナ侵略や台湾問題で対立する米欧などをけん制したつもりなのだろう。
共同声明にはまた、中露貿易の拡大や、経済取引での双方の通貨利用など、経済面で関係強化を目指す文言が並んだ。
プーチン氏は今回、エネルギー、金融の担当閣僚や主要企業のトップを多数同行させた。制裁に加わっていない中国との貿易を一層拡大して戦時下でも経済を安定させ、同時に戦費を調達するという狙いがあるのではないか。
中国の支援がなければ、ロシアは侵略を継続できなくなりつつある実態を示しているようだ。
一方、習氏も会談で「中露関係の発展は、地域と世界の平和、安定、繁栄に資する」と述べ、両国の関係強化に期待を示した。
米中対立が深刻化する中、習氏としては、ロシアを支えることで、米国に対抗する立場を強化したいと考えているのだろう。
米欧日は中国に対し、ロシアとの関係を見直すことが「責任ある大国」のあるべき姿だと、粘り強く説き続けねばならない。
中露首脳は「ウクライナ危機の政治的解決」が重要だとの認識でも一致した。侵略を仕掛けた張本人が、撤退もせず、侵略の果実を握ろうという「政治的解決」を主張するとは、虫が良すぎる。
仮に中ロが和平を主導すれば、ロシア軍の全面撤退が遠のく恐れがある。16日発表の共同声明はウクライナの領土の一体性の尊重を明記しておらず、看過できない。中国は力で国境を変更するロシアの試みを容認してはならない。
共同声明には、合同演習と海空の合同パトロールを含む軍事分野の協力も盛り込んだ。衛星ナビゲーションシステム分野での協力もうたった。習氏は、先端技術やサプライチェーン(供給網)の安定を巡る協力強化にも言及した。
ロシアは軍民両用の物資の多くを中国から調達している。米国は工作機械やマイクロ電子技術、弾薬などに不可欠な材料について、中国がロシアへの最大の供給源だとして供給停止を要求している。
習氏は先の中仏首脳会談で、ロシアに武器を売らないことや軍事転用が可能な材料の輸出を厳しく管理すると約束したという。今回の軍事を含む中ロ協力の強化という合意と矛盾している。
中ロ首脳は会見などで米国批判を展開した。共同声明でも「覇権主義」やアジア太平洋地域での軍備拡張を指摘し、既存の国際秩序に挑戦する姿勢を強めた。世界分断の試みであり、日欧米などは結束を強めて対抗すべきだ。
中露首脳会談 軍事協力強化は許されぬ(2024年5月18日『産経新聞』-「主張」)
断じて容認することができない。
ロシアのプーチン大統領が訪中し、習近平国家主席と首脳会談を行った。侵略後、3度目の対面会談だ。昨春のモスクワでの会談はプーチン氏が「ウクライナからの子供連れ去り」の戦争犯罪容疑で国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出された直後だった。今回、同氏を国賓として遇した習氏は戦争犯罪容疑など意に介さぬようだ。
両首脳はウクライナ危機について共同声明に「対話による解決が重要」と記した。ロシアが占領地に居座ったまま停戦交渉を強行しようということなのか。まっとうな「対話」は露軍が全占領地から撤退した後でなければ成り立たない。
声明は「合同演習実施を含む軍事分野の協力拡大」もうたった。中国は兵器・弾薬の対露直接供与はしていないとして軍事的「中立」を主張している。だが4月に訪中したブリンケン米国務長官は、露防衛産業が必要とする工作機械や超小型電子技術、各種の軍民両用品について「中国が最大の供給者だ」と厳しく非難した。特にロケット弾の推進剤などにも使われる「ニトロセルロース(硝化綿)」の対露輸出の増加に懸念を示した。中国はロシアを勢いづける輸出は即刻やめるべきだ。
西側による経済制裁の一方でロシアの対中貿易は昨年、過去最高の2400億ドルだった。ロシアにとって中国は、軍事・経済で頭の上がらない侵略継続への命綱になりつつある。
中露は声明で「世界の多極化と経済グローバル化が戦略的選択」「アジア太平洋での閉鎖的な軍事同盟に反対」などと表明した。だが、力による現状変更をともに強行する中露への抑止策として西側の団結はある。中露の認識は本末転倒である。