東北電力女川原発が立地する宮城県女川町は、人口減少が進む上に経済基盤の水産業を取り巻く環境も厳しく、原発依存を脱却できない。そのためなのか、東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受け、原発も被災したにもかかわらず、強い反対もなく町や県は再稼働に同意した。ただ、原発は牡鹿半島の中央付近に位置し、深刻な事故が起きれば住民の孤立など避難は困難を極める。(渡辺聖子、荒井六貴)
◆再稼働で一部は潤うが…
宮城県女川町役場
◆震災後は漁業者も水揚げも半減
一方で、昔から町を支えてきた漁業は、先行きが厳しい。
世界三大漁場とも呼ばれる三陸や金華山沖に近く、イワシやサバ、サンマが水揚げされ、カキやホタテを養殖。それでも、2011年の東日本大震災前と比べると、漁業者数は半分以上減って約200人、昨年の水揚げ量も半減の約3万トンだった。養殖のホタテは、東京電力福島第1原発の処理水放出の風評被害で半値になり、東京電力から賠償を受けている。
県漁業協同組合女川町支所の岡田光弘支所長は「後継者がなかなかいない」と窮状を語る。
◆「消滅可能性自治体」のリスト入り
半島にある女川原発は避難時の制約が大きく、事故が起きた際のリスクは計り知れない。
◆半島先端の住民はなすすべなし
原発から半島先端側に約10キロの石巻市小渕浜。漁港を囲むように民家が立ち並ぶ。養殖業の60代女性は「原発に近づいて逃げられるわけない。集落にはみんなが入れるシェルターもない」と、現実的な避難対策がないまま再稼働へと進む現状に憤る。
女川町内では東日本大震災の津波で道路が寸断し、孤立地域が発生。復旧に数日かかり、原発に避難した住民もいた。19年の台風19号の時は道路が浸水し、土砂崩れも起きた。町の担当者は「震災後に道路の拡幅やかさ上げをして強化はされているが、絶対はない」と話す。
◆屋内退避の結論を待たずに再稼働へ