今日14日は年金支給日!モデル夫婦世帯は2人分で「月額約23万円」となるが「一般的」な水準といえるのか?

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写真:LIMO [リーモ]
公的年金は、原則2ヶ月に1回、偶数月に支給され、次回の年金支給日は6月14日となっています。
 
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年金は基本的に「後払い」となるため、6月14日に支給される年金は「2024年4月・5月分」であり、「新年度初めて」の年金支給となります。
厚生労働省は2024年度の年金額の改定を公表しており、今年度は2.7%の増額改定となりました。
厚生労働省が公表した資料では、モデル夫婦世帯の場合は2人分で「月額約23万円」となりますが、果たしてこの金額は一般的な水準といえるのでしょうか。
本記事では、厚生労働省が公表した2024年度の年金額例と共に、国民年金・厚生年金の平均月額について紹介していきます。
記事の後半では、パターン別に夫婦が受け取れる年金額を紹介しているので、参考にしてください。
※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
2024年度は2.7%の増額改定!いくら年金が増える?
冒頭でお伝えしたように、2024年度の年金額は昨年度と比較して2.7%の増額改定となります。
厚生労働省が公表した資料によると、2024年度の年金額例は下記のとおりです。
【2024年度の年金額の例】
 ・国民年金(老齢基礎年金):月額6万8000円(+1750円)
 ・厚生年金:月額23万483円(+6001円)
国民年金は昨年度よりも1750円、厚生年金は昨年度よりも6001円増えており、どちらも年金額が上がっていることがわかります。
この金額をみて「思ったよりも年金が受け取れる」と思った方は要注意です。
厚生労働省が公表した上記の金額は、あくまで満額受給を想定した「国民年金1人分の年金額」と「標準的な夫婦2人分の年金額」となっているのです。
つまり、6万8000円は国民年金を満額受給した場合の金額であり、仮に未納期間がある人はこの金額よりも受給額が少なくなります。
また、23万483円は厚生年金に加入しているモデル夫婦世帯2人分の金額であり、ここでいう「標準的な夫婦」とは、下記のケースを指します。
 ・夫婦ともに国民年金を満額受給
 ・夫または妻が厚生年金(平均標準報酬43万9000円で40年間就業)
上記をふまえ、一概に全ての人が、厚生労働省が公表した年金額を受け取れるわけではない点にご留意ください。
では、実際に受け取れる年金額はどのくらいが「一般的」なのでしょうか。
次章にて、国民年金と厚生年金の平均月額を確認していきましょう。
国民年金と厚生年金の平均月額
厚生労働省年金局の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金と厚生年金それぞれの平均月額は下記のとおりです。
国民年金の平均月額】
 ・全体:5万6316円
 ・男性:5万8798円
 ・女性:5万4426円
【厚生年金の平均月額】
 ・全体:14万3973円
 ・男性:16万3875円
 ・女性:10万4878円
国民年金は原則日本に住む20~60歳未満の人が加入対象で、保険料が一律であるため受給額に個人差はあまり生じていません。
一方で厚生年金は、主に会社員や公務員などが加入対象で、現役時代の年収によって保険料が変わることから、受給額に個人差が生じやすいです。
前章で紹介した2024年度の年金額例と比較すると、国民年金の平均額は月額5万円台、厚生年金の平均額は夫婦2人分(夫が厚生年金に加入・妻が国民年金に加入)で月額21万円台と、いずれも水準が低いと言えます。
では、モデル夫婦世帯2人分で「月額約23万円」となる年金額が「一般的」な水準と言えるのでしょうか。
次章にて、現役時代の年収の観点から、考えてみましょう。
モデル夫婦世帯2人分で「月額約23万円」は「一般的」な水準といえるのか?
厚生労働省が公表したモデル夫婦世帯が年金として「月額23万円」を受け取る場合、下記のような世帯が想定されます。
 ・夫婦ともに国民年金を満額受給
 ・夫(または妻)が厚生年金(平均標準報酬43万9000円で40年間就業)
平均標準報酬43万9000円を年収に単純換算すると「約526万円」となります。
国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの平均給与は458万円です。
また、国税庁の同調査による年代別の平均年収では、40歳代後半~50歳代後半でしか500万円台となっていません。
以上のことから、モデル夫婦世帯のように平均年収約526万円で40年間就業できる人は「一般的」ではないと言えるでしょう。
どちらか一方が厚生年金・どちらか一方が国民年金のみを受給する夫婦世帯では、モデル夫婦世帯の年金額である「月額約23万円」を下回る世帯の方が多いのではないかと推測できそうです。
しかし、これはあくまでも現役世代の平均給与を一つの目安として比較したものです。いまのシニア世代の実態はどうなのか。次章で確認していきましょう。
年金の平均額から「夫婦で受け取れる年金額」をシミュレーション
では最後に、年金の平均額を用いて「夫婦で受け取れる年金額」をシミュレーションしてみましょう。
「夫婦で受け取れる年金受給額シミュレーション」は下記のとおりです。
●夫:厚生年金&妻:国民年金
 ・夫:16万3875円
 ・妻:5万4426円
 ・合計:21万8301円
 ・夫:5万8798円
 ・妻:5万4426円
 ・合計:11万3224円
●夫:厚生年金&妻:厚生年金
 ・夫:16万3875円
 ・妻:10万4878円
 ・合計:26万8753円
●夫:国民年金&妻:厚生年金
 ・夫:5万8798円
 ・妻:10万4878円
 ・合計:16万3676円
上記のシミュレーションは、あくまで平均年金受給額に基づいて算出されたものとなっていますが、厚生年金加入世帯であれば、月額20万円を超える受給額が期待できます。
一方、夫が国民年金のみ加入している場合は、夫婦の平均年金受給額は10万円台にとどまることがわかります。
なお、本記事で紹介した年金額は全て「額面の金額」であり、実際はここから税金や社会保険料などが差し引かれます。
差し引かれる金額は世帯状況によって異なりますが、実際に受け取れる金額は「額面の金額」の9割~8.5割程度と思っておけると良いでしょう。
年金だけに頼らないための老後資金の準備をしておこう
本記事では、厚生労働省が公表した2024年度の年金額例と共に、国民年金・厚生年金の平均月額について紹介していきました。
現役時と比較すると、老後は収入が一気に減ってしまうことが予想できます。
老後を迎えてから困らないよう、年金だけに頼らない老後資金の準備を今のうちからしておけると良いでしょう。
参考資料
 ・厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
 ・厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
 ・国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査
和田 直子