数年前に「老後2000万円問題」が大きな話題となったことから、「老後資金として2000万円は用意しておくべき」と考えている人も多いのではないでしょうか。
【グラフ】65歳以上「無職夫婦世帯」の平均貯蓄額はいくら?赤字額も見る
その一方で、「老後までに2000万円の準備は難しい」と不安に思っている人もいるでしょう。
しかし、厚生労働省が公表した「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」では、100%年金だけで生活している人は、全体の44%と半数にも満たない結果となっており、多くの世帯で「年金だけでは赤字になる」ことが予想されます。
では、老後生活をスタートさせている65歳以上の貯蓄額・平均的な収支はどのくらいなのでしょうか。
本記事では、2024年3月に公表された最新データより、65歳以上「無職の夫婦世帯」の平均貯蓄額及び生活支出・平均収入について詳しく紹介しているので、一緒に確認していきましょう。 記事の後半では、平均的な年金受給額にも迫ります。 ※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
65歳以上「無職の夫婦世帯」平均貯蓄額はいくら?
まずは65歳以上「無職の夫婦世帯」の平均貯蓄額を見ていきましょう。
総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2022年(令和4年)平均結果-(二人以上の世帯)」によると、世帯主が65歳以上の平均貯蓄額の平均値は「2414万円」、中央値は「1677万円」となりました。
平均値は、貯蓄額が極端に多い人がいると、その額に偏る傾向があるため、実態に近い貯蓄額をしりたい方は中央値を参考にすることをおすすめします。
中央値をみると「1677万円」であり、さらに貯蓄割合の分布をみると、2000万円以上の世帯は「全体の42.5%」となっています。
このことから、半数以上の世帯では貯蓄が2000万円に到達していない現状がみてとれます。
冒頭でもお伝えしたように、100%年金だけで生活できている世帯は半数以下となっており、多くの場合は「年金以外の資金」が必要になることが予想されますが、果たして月にどのくらいの補填が必要になるのでしょうか。 次章にて、平均的な「65歳以上無職の夫婦世帯」の家計収支を確認していきましょう。
「65歳以上無職の夫婦世帯」月に約4万円の赤字に
2024年3月に公開された総務省「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、65歳以上の無職の夫婦世帯の平均的な家計収支は下記の結果となっています。
・実収入:24万4580円
・可処分所得(生活費として使える収入):21万3042円
・消費支出:25万959円
・不足分:3万7916円 生活費として使える平均的な手取り収入は約21万円なのに対して、消費支出は約25万円であり、毎月約4万円の赤字となっています
。 仮に65歳から90歳までの25年間、老後生活を送る場合、合計で1200万円もの補填が必要になります。
さらに上記は、日々の生活支出に対する不足金額であり、実際の老後生活では「医療費」や「介護費用」「家の修繕費用」といった突発的な支出も起こり得ます。 このことから、「安泰な老後生活」を送るためには、ある程度の老後資金は準備しておく必要があるとうかがえます。
なお、上記のデータはあくまで年金をメインとする収入が「21万円」であることが条件となっており、人によってはさらに赤字額が増えることも予想されます。 つまり誰しもが「4万円の赤字になる」とは限らず、人によっては「毎月10万円以上の赤字」になる可能性もあるため、将来受け取れる年金額を知っておくことも大切です。 次章にて、老後の収入源の柱となる「公的年金」の平均月額について確認しておきましょう。
老後の収入源「公的年金」の平均月額はいくら?
では最後に、老後の収入源の柱となる公的年金「厚生年金と国民年金」の平均月額をみていきましょう。 厚生労働省年金局の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金・厚生年金の全体及び男女別の平均月額は下記のとおりです。
●【国民年金】
・男女全体平均月額:5万6316円
・男性平均月額:5万8798円
・女性平均月額:5万4426円
●【厚生年金(国民年金を含む)】
・男女全体平均月額:14万3973円
・男性平均月額:16万3875円
・女性平均月額:10万4878円 国民年金は保険料が一律であることから、受給額に個人差があまりない一方で、厚生年金よりも受給額が少なくなっています。
仮に夫婦二人とも国民年金のみ受給の場合は合計で約10万円であり、前章で紹介した「老後の平均的な消費支出」を想定した場合、毎月約15万円の赤字になります。 一方で厚生年金は、現役時代の年収や加入期間によって受給額が変わるため個人差が大きく、全体・男女間において受給額にバラつきがあります。
仮に夫婦二人とも、厚生年金を受給でき平均的な金額を受け取れる場合は合計で約28万円に。 平均的な消費支出を想定した場合、年金だけで生活していける可能性があります。
このように、「老後資金がどのくらい必要なのか」「毎月どのくらい補填が必要なのか」は、受け取れる年金額によって大きく変わるため、ご自身が将来受け取れる年金額をしっかりと把握しておくことが大切です。 将来いくら年金を受給できるか、より詳しくしりたい方は「ねんきんネット」または「ねんきん定期便」で確認しておけると良いでしょう。
老後に必要な資金は世帯によって異なる!年金だけに頼らない資金準備を
本記事では、65歳以上「無職の夫婦世帯」の平均貯蓄額及び生活支出・平均収入について詳しく紹介していきました。 老後資金は、老後の収入や生活費によって準備しておくべき金額が大きく変わるため、「将来受け取れる年金額」と「老後の生活シミュレーション」が大切になります。 本記事をきっかけに、年金だけに頼らない資金準備を進めてみてはいかがでしょうか。 まずは、ご自身の年金額を把握するために「ねんきんネット」または「ねんきん定期便」を確認してみましょう。
参考資料
・総務省「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」
・厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2022年(令和4年)平均結果-(二人以上の世帯)」
太田 彩子