「日本の城郭で最も多いフォロワー数を獲得することになった。職員が松本城の多彩な魅力を伝える工夫をしてくれた」。松本市の臥雲義尚市長は5月28日の定例会見で、運営する松本城のインスタグラムのフォロワー数が日本一になったと発表した。
市によると、全国50カ所の城の管理団体でつくる「全国城郭管理者協議会」の中で公式インスタを持つのが24城。会見した同日午前11時時点で、松本城のフォロワー数が2万7853人となり、首位だった熊本城の2万7776人を上回った。6月7日午後2時半時点で松本城は3万2349人と増やし、熊本城に2600人の差をつける。
公式インスタは2021年5月、観光客への発信力を高めようと開設。週2～4回のペースで、現在まで約600の投稿を重ねてきた。フォロワー数が伸び悩んだ時期もあるが、22年1月末の北アルプスを背にした松本城の写真を皮切りに、同年2月11日の雪化粧した松本城の写真は約7万8000の「いいね」が付いて、急上昇を果たした。
松本城の公式インスタグラム。2022年2月、城が雪化粧した写真の投稿には約7万8000の「いいね」が付いた
投稿を担当する松本城管理課の小林みかさんは「時間帯、撮影する角度の違いでさまざまな表情の松本城を届けたい」と3年余り続けてきた。城周辺に生息する地域猫を載せたり、英語や中国語、タイ語などのハッシュタグを付けたりして、新たなファンも取り込んで天下を取った。小林さんは「感無量です。これからも国内外の人々に魅力を発信したい」と意気込む。
「やられたらやり返す」「倍返しだ」。公式Xにこう投稿したのは、首位陥落となった熊本城。インスタグラムを15年6月に開設し、熊本地震からの復旧状況やイベント告知を中心に週1回の頻度で発信してきた。
◆「外国人のフォロワーが少なく伸びしろはある」まだまだ野心
首位奪還を宣言した熊本城。シックな外観や整然とした石垣が美しい＝2011年10月、熊本市で
「こちら特報部」の取材に熊本城総合事務所は「悔しいが、お城人気が高まっていると考えるとうれしい。近いうちに天下を取り返すため、現在作戦会議中」とコメント。担当者は「外国人のフォロワーが少なく伸びしろはある。松本城のようにパンフレットでは見られないような角度から城郭を撮影した投稿などを増やし、フォロワーを獲得したい」と巻き返しを誓う。
「お城博士」として知られる名古屋市立大の千田嘉博教授（城郭考古学）は「城のSNS（交流サイト）はイベント告知など堅い発信が多かった。松本城のようにファンをつかもうとする手法は画期的だ」と評価。「世界中で侍は人気で、城はインバウンド（訪日客）も狙える。他の城郭管理団体も『追い付け、追い越せ』で発信を工夫してもらい、SNS戦国時代に突入してほしい」と期待する。
