国立大の財務「もう限界」 交付金増額訴え 国立大学協会(2024年6月7日『時事通信』)

 国立大学協会は7日、物価高騰などを受けた国立大の財務状況について「もう限界だ」とする声明を公表した。

 同協会の永田恭介会長は東京都内で記者会見し、「各大学の昨年度の会計を見て、大きな問題を背負っていることに気付いた。本当に厳しい状況だ」と強調し、運営費交付金の増額などを訴えた。 

 

国立大学協会声明 ------我が国の輝ける未来のために-----
令和6年6月7日 
一般社団法人 国立大学協会理事会 
1,国立大学の覚悟 
天然資源に乏しい我が国にとって、最も重要なのは人材であり、社会と産業を動かす
科学技術の進歩です。大学は、高い能力と見識を備え、未来を創造する人材の育成と、
高度で先端的な研究の推進に重要な役割を果たしてきました。その中でも国立大学は、
創設以来、世界最高水準の教育研究の実施や重要な学問分野の継承・発展、すべての都
道府県に設置され全国的な高等教育の機会均等の確保、グローバル人材の育成といった
役割を担ってきました。これからも国立大学は、我が国の研究力の源であって、我が国
全体の、そして各地域の文化、社会、経済を支える拠点であり、産業、教育、医療、福
祉などに十全の責務を負っていく覚悟です。 
2,国立大学を取り巻く財務状況の悪化 
国家予算が厳しさを増すにつれ、国立大学の活動を支える基盤経費(運営費交付金
は減額されたままです。加えて、社会保険などの経費の上昇、近年の物価高騰、円安な
どにより基盤経費を圧迫し、実質的に予算が目減りし続けています。また、働き方改革
の実現のため、大学教職員、学校教員や医師を確保する必要も出てきました。その中に
あっても質の高い教育研究活動を維持・向上していくために、寄付金などの外部資金や
自ら収入を増やす努力も進めています。そうして、我が国の課題、また地球規模の課題
の解決に、教育と研究を通じて全力で取り組んできました。 
しかし、もう限界です。 
3,輝ける未来への協働 
我が国の教育研究の根幹をなす86の国立大学は、輝ける未来に向けて、以下のことに
取り組みます。 
①博士人材などの高度人材の養成をさらに進め、輝ける未来創造を牽引します。 
②社会人や女性、外国人など多様な人材を受入れ、多様性の時代を牽引します。 
③全国の大学進学率の向上に努め、国全体の知のレベルを上げて、地域社会とグロー
バル社会を牽引します。 
4,国民の皆様へのお願い 
このように、国立大学はこれまで以上に大きな役割を果たして、我が国全体のさらな
る発展を支え、豊かな社会を実現していこうとしています。国立大学の担うこのミッシ
ョンは、国や地域、産業界や自治体を含む社会全体、そして国民の皆様一人ひとりに、
積極的に参加いただき、ともに協力していくことにより、実現していくことができます。 
国立大学の危機的な財務状況を改善し、我が国の輝ける未来を創り出すために、皆様
の理解と共感、そして力強い協働をお願いする次第です。 

(参考) 
一般社団法人 国立大学協会理事会メンバー:

永田恭介(筑波大学長)、寳金清博(北海道大学長)、藤澤正人(神戸大学長)、益一哉(東京工業大学長)、佐々木泰子(お茶の水女子大学長)、西川祐司(旭川医科大学長)、冨永悌二(東北大学長)、松岡尚敏(宮城教育大学長)、田中雄二郎(東京医科歯科大学長)、林佳世子(東京外国語大学長)、梅原出(横浜国立大学長)、牛木辰男(新潟大学長)、和田隆志(金沢大学長)、上田孝典(福井大学長)、松尾清一(東海国立大学機構長)、湊長博(京都大学長)、西尾章治郎(大阪大学長)、中島廣光(鳥取大学長)、河村保彦(徳島大学長)、仁科弘重(愛媛大学長)、石橋達朗(九州大学長)、兒玉浩明(佐賀大学長)、小川久雄(熊本大学長)、田野俊一(電気通信大学長)、藤井輝夫(東京大学長)、中野聡(一橋大学長)、岡本幾子(大阪教育大学長)、塩﨑一裕(奈良先端科学技術大学院大学長)、越智光夫(広島大学長)、浅井祥仁(高エネルギー加速器研究機構長)、位田隆一(専務理事・前滋賀大学長)、村田善則(常務理事・事務局長) 

 

参考資料